日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『イイズナくんは今日も、』 櫻 いいよ

(月刊「こどもの本」2020年11月号より)
櫻 いいよさん

つながり、つなげて、ひろがる。

 何事にも、運や縁というのはあります。私も、今までを振り返ると「運がよかったなあ」「縁があるんだなあ」とよく感じます。今こうして文字を書き続けていられるのも、たくさんの運と縁に助けられていたな、と。

 けれど、それは偶然の出会いなのだろうか、ともっと思い返してみると、不思議とそこにつながるなにかが過去のどこかにあったりします。

 物語と出会い、物語を書く。そして続ける。それをきっかけに出会った人と関わっていく。それが、また新しいなにかと触れる。そんな些細な、けれど大切なものや人との出会いが今の私を作り上げてくれました。

 どこかのタイミングで、それが途切れてしまう可能性もあったかもしれません。仕事が忙しくなったからとか、環境がかわったとか、スランプに陥ったとか。ときに運に助けられたりもしましたが、今もある縁のそのひとつひとつが、私と、私の周りにある様々なものにつながっています。

 運や縁は、その瞬間だけのものじゃなく、想いや時間によって、過去と未来をつなげてくれるものになるのではないかと思います。それが運命とか奇跡になるのかもしれません。

 だからこそ、一度つながったなにかを大切にしたい。あせらず、じっくりと、時間を重ねながら。

 そんな気持ちを込めて書いたのが、この『イイズナくんは今日も、』です。

 目つきの悪い飯綱くんに、マイペースな春日ちゃん、飄々とした式部先輩にちょっと怖いミッチー先輩、そして元気な千秋ちゃんと真佐くん。彼らがなにかと誰かと出会って、触れ合って、関わっていく。そんなふうに少しずつ縁を広げていくみんなを、友達のように思ってもらえたらいいなあと思っています。

 大事なもの、大切な人、そこにはきっと想いがあります。

 私が私に伝えたいことが、誰かにも伝わってくれたら嬉しいです。

 縁をテーマにしたこのお話が、誰かとなにかの縁でつながれますように。

(さくら・いいよ)●既刊に『世界は「 」で満ちている』『ウラオモテ遺伝子』『交換ウソ日記』など。

『イイズナくんは今日も、』"
PHP研究所
『イイズナくんは今日も、』
櫻 いいよ・著
本体1,200円