日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

我が社の売れ筋 ヒットのひみつ18
『森のゲオルグ』 出版ワークス

(月刊「こどもの本」2020年9月号より)

いまを乗り切る勇気をくれる
『森のゲオルグ』
ノーブスミー さく・え
2019年6月刊行

 この本は、「ゲオルグ」という妖精の子どものお話です。優しいお父さんとお母さんに育てられたゲオルグは六歳になり、学校に通いはじめました。ほかの妖精よりも、ひときわ小さいゲオルグは、まわりの妖精の子どもたちが背中に羽が生えはじめても、まだその気配はなく、一人だけ飛ぶことができません。ところが次の年、みんなで空飛ぶ遠足に行くことになり……。この時点で、ゲオルグはまだ飛ぶことができないのですが、お父さんやお母さんを心配させまいと、遠足に向かいます。さらに、道中アクシデントが起こっても、機転を利かせ、友だちや先生を守ってくれます。

 ゲオルグの特長は三つあります。まず、「明るさ」。小さくて自分だけ羽が生えていないことをなんとも思っていません。それどころか、一人で虫の言葉を学習し、虫の友だちを作りました。次に、「逞しさ」。自分だけできない学習の時間もあるのですが、「羨ましいな」とぐずることもなく違う楽しみを見つけます。そして「賢さ」。お父さんに読んでもらった本で知識を蓄積し、結果、みんなの窮地を救ってくれます。

 これが現実ならば、大人たちは、羽が生えてこないことを障害と考え、すぐに「かわいそう」と思い込んでしまいます。でも、物語の中のゲオルグは、自分を精一杯生きています。

 ゲオルグを見ていると、私も反省することしきり。みんなと同じようなことができないと、できるようにさせたいと思ってしまっていたなと。自分の子育てや前職(教職)でもです。「一人一人違うんだから」ということは、頭ではわかっているのですが、なかなか実践することはできませんでした。

 私と同じように思ってくださったのか、この本は神奈川、秋田、沖縄で昨年度優良図書に選ばれ、日テレでは梅澤・滝両アナの読み聞かせもYouTubeに上がっておりました。大人と一緒に読んでもらいたい本です。

「新型コロナウイルス」で心が疲弊してしまっている今、「強く、逞しく。明るく暮らしていかなくてはいけないな」と思いながら過ごしていますが、『森のゲオルグ』を読み返し、明るい陽射しが見えてくるような気がします。在宅ワークの間に、これからの生活を考えると、一人で後ろ向きになってしまうこともありました。でもゲオルグの賢さを思い出し、したたかに、みんなで協力して生きていこうと思いました。

 人を元気にさせてくれる『森のゲオルグ』をご家族で是非、ご一読お願いします。

(出版ワークス 服部純子)