日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『ぶぶるん ふるふる』 松本聰美

(月刊「こどもの本」2020年2月号より)
松本聰美さん

空と大地と海と

 心に残る思い出があります。小学5年生のとき、臨海学校でのことです。

「宇宙って、どこまで続いているんだろうね」

 夜、友人と布団の中で語り合いました。

 その日、満天の星を見たからかもしれません。見上げていた宿舎の天井が、宇宙のように深い青色となり、そこに無数の星が見えてきました。「ああ、この中の一つが地球なんだ。その上に私がいるんだ」と、胸が震えたのを覚えています。その時の感覚が、なぜかずっと体の中に残っているのです。

 地球を感じられる絵本を作りたい、といつしか思うようになりました。

 そんな思いから生まれたのが『ぶぶるん ふるふる』です。

 本作はナンセンス絵本です。ブタが飛んだりトランクが走ったり、キャラクターたちが空、大地、海を駆け巡ります。そして、どのページもちょっと変わった擬音語から始まります。その擬音語は〈ぶぶるん ぶるぶる〉から〈ぶるぶる ぶぶぶぶ〉〈ぶぶぶぶ ふんらら〉と、鎖のようにつながっていきます。そして最後の擬音語は、最初の〈ぶぶるん〉にもどります。地球を取りまく〈水〉が空と陸と海を循環するように音が廻っていくのです。

 ところで、タイトルの〈ぶぶるん ふるふる〉ですが、表紙以外、どこにも出てきません。これは最初に登場するヘリコプターがまだずっと向こうを飛んでいる音です。それを大地に寝ころんだ男の子が感じているのです。

 あずみ虫さんの絵は、ダイナミックで立体的。手をのばせばつかめそうです。最後、キャラクターたちがそろって、海の上を進む場面があります。行く手に、燦々と輝く太陽をあずみ虫さんが描いてくださいました。あっと思いました。太陽があってこその地球です。

 空、大地、海、それぞれのシーンの最後のキャラクターは、飛びたい、走りたい、泳ぎたいと希望へ向かいます。

 読み終わった読者が、空や大地や海を見て、ワクワクした気持ちを感じてくれればいいなと、思っております。

(まつもと・さとみ)●既刊に『声の出ないぼくとマリさんの一週間』『ぼく、ちきゅうかんさつたい』『わたしは だあれ?』など。

『ぶぶるん
ほるぷ出版
『ぶぶるん ふるふる』
まつもとさとみ・ぶん/あずみ虫・え
本体1,400円