日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

我が社の売れ筋 ヒットのひみつ14
『?(ギモン)を!(かいけつ)くすりの教室』(全3巻)     保育社(メディカ出版編集局)

(月刊「こどもの本」2020年1月号より)

「くすり」を通して知って・学んで!

加藤哲太 監修/WILLこども知育研究所 編著
2017年12月刊行

 保育社は医学・看護書を出版しているメディカ出版の完全子会社という位置づけにあります。『?(ギモン)を!(かいけつ)くすりの教室』を担当した私は、普段はメディカ出版刊行の医師・看護師向けの本を中心に企画・制作をしています。

 今回、「くすりの本」を制作するにあたって、医学・看護書を出版してきた実績を活かしながら、小学生~中学生向けに「くすり」に関する知識をわかりやすく伝えることを重要視しました。

 全国で子どもや教員向けにくすり教育を行っておられる一般社団法人日本くすり教育研究所代表理事・加藤哲太先生に企画段階からご指導頂き、伝え方・見せ方を工夫しています。医師・看護師向けであれば、リアルでも問題ない解剖図を、リアルになりすぎず可愛らしく、かつ絶妙に特徴をとらえているイラストや、難しい化学反応は学術的な正しさを残しながら動きのあるイラストで表現するといった、細かな点で工夫をしています。それでいて、子ども向けだからと、難しい解説を避けるのではなく、大人でも知らないような内容を積極的に盛りこみ、わかりやすくまとめることで、本の資料としての価値を高めるようにもしています。

 さらに、最大の特徴は、ただ「くすり」というものの使い方・選び方を紹介しているわけではない、ということです。各巻すべて序盤は「セルフケア(自分で自分の体調をコントロールすること)の重要性」についての説明から始まります。そして、それでも具合が悪くなってしまったときの対処法の一つとして「くすり」をとりあげています。つまり、使い方ではなく付き合い方が学べる本になっているのです。これは、加藤先生がこだわられた点です。

 全3巻から成り、1巻では薬の種類や特徴、薬の開発・研究の流れなど、2巻は薬の購入の仕方、使い方、さらには説明書の読み方など、3巻では薬の体の中での作用の仕方、症状ごとに効果のある成分について解説しています。薬のことならなんでも知っている「ハカセ」と、ちょっとおっちょこちょいな「ハカセの助手」の楽しいやり取りも見どころです。

 当書籍を通して、子どもだけでなく大人にも、「くすり」には様々な特徴があり正しく選んで使うことの大切さ、そして「くすり」が万能ではないこと、人間の体の素晴らしさなどに気が付いてもらえたらと思います。

(保育社(メディカ出版編集局) 中島亜衣)