日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『ポリぶくろ、1まい、すてた』 藤田千枝

(月刊「こどもの本」2019年9月号より)
藤田千枝さん

プラスチックごみ問題へ思いを寄せて

 美しいコラージュでいろどられたこの絵本は、今から20年も前に、アフリカの小国ガンビアでプラスチックごみのリサイクルに取り組んだ若い女性たちの姿をえがいたものです。

 著者のミランダ・ポールさんは、アフリカでボランティア活動をしていたとき、町や村のいたるところで、ごみが捨てられていることを、とても残念に思ったそうです。そんなときに、この本の主人公であるアイサト・シーセイさんと出会い、この本が生まれました。

 アイサトさんは、みんながしているように、道ばたにポリ袋を1枚捨てました。ある日、それがとんでもないことになっていると気づきます。「自分たちの手でなんとかしよう!」と声をあげ、仲間たちと一緒にプラスチックごみのリサイクルを始めました。その後、彼女は、保健所や図書館の建設、女性の教育などにも取り組み、今もなお活躍の場を広げています。巻末のQRコードから、そんな活動の様子を動画で視ることができます。あのころのきれいな村に住みつづけられるように―それが、彼女の活動の原動力です。

 一万メートルの深海からプラスチックごみが見つかったというニュースがありました。このままだと2050年には、海のプラスチックごみの重量が、魚の重量を超えるともいわれています。こんなにも私たちの生活に関わっているプラスチックの問題なのに、世界中で大きな問題になっているのに、どこか日本の動きは鈍いように感じられてなりません。

 地球上のあらゆる人びとが、将来に向けて幸せに暮らしていくための目標「SDGs(エス・ディー・ジーズ:持続可能な開発目標)」の取り組みが始まっています。

 自分たちでできることを考え、そして実際にアクションを起こしたアイサトさんとその仲間たちの実直な感受性と力強い意志に対して、私は心から敬意を表します。そして、より多くの読者の心に響きますように。

(ふじた・ちえ)●既刊に『まほうのコップ』など、既訳書にS・ヘン『実物大! 世界のどうぶつ絵本』など。

『ポリぶくろ、1まい、すてた』"
さ・え・ら書房
『ポリぶくろ、1まい、すてた』
ミランダ・ポール・文/エリザベス・ズーノン・絵/藤田千枝・訳
本体1,500円