日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『あそびうたするもの よっといで』『あそびうたするもの このゆびとまれ』 中脇初枝

(月刊「こどもの本」2019年6月号より)
中脇初枝さん

あそびうたするもの、よっといでー

 自他ともに認める音痴のわたし。なるだけ、歌を歌わないでいられる道を辿って生きてきました。

 ところが、こどもたちに恵まれて、ともに暮らすようになったある日のことです。突然、口から歌があふれだしてきました。

 こどもたちの小さな手に触れて、思わず、「いっぽんばーし こーちょこちょ」。ころんだら、「いたいの いたいの とんでいけ」。ほっぺたにごはんつぶがついていたら、「おべんとうつけて どこいくの」。約束するときは、「ゆびきりげんまん」。どっちにするか悩んだら、「どちらにしようかな」……。

 こんなにたくさんの歌が自分の中に眠っていたことに驚きました。どの歌も、小さかったときにだれかに教えてもらい、歌って遊んだものばかり。

 こどもたちは大喜びです。こどもって、なんて歌がすきなんでしょう。彼らにとっては、歌のうまいもへたもないのです。また、単調なふしが多く、歌がへたなことは気づかれません。

 こうした、こどもたちによって歌われてきた歌には、決まった名前すらなく、ほとんど研究がすすんでいません。けれども、平安時代まで遡ることができる歌もあるほど、古い歴史を持っています。口承で伝えられ、おもしろくないものはすたれていったので、今も歌われている歌は、選りすぐられた、おもしろいものばかり。

 同時に、こどもたちはめずらしくて新しいものが大すき。古い形にとらわれず、どんどん新しい歌を生みだしていきます。

 こんなに豊かなあそびうたの世界を、ひろせべにさんが、どこかなつかしい、ノスタルジックでありながら、くすっとわらえる絵で描いてくださいました。絵を見せていただくたびに、一体どこからこんな発想が出てくるのかしらと驚かされてばかりでした。

 2冊組ですが、どっちから読んでも、どこから読んでも楽しめるようになっています。

 さあ、いよいよ刊行ですよ。

 あそびうたするもの、よっといでー。

(なかわき・はつえ)●既刊に『ちゃあちゃんのむかしばなし』『こりゃ まてまて』『きみはいい子』など。

『あそびうたするもの『あそびうたするもの

福音館書店
『あそびうたするもの よっといで』『あそびうたするもの このゆびとまれ』
中脇初枝・編/ひろせべに・絵
本体各1,600円