日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『みんなのおねがい』「はじめての行事えほん」シリーズ(既刊6冊、全12冊)最新刊 すとうあさえ

(月刊「こどもの本」2019年5月号より)
すとうあさえさん

季節の行事を楽しむ
はじめの一歩に

 今から三十年ほど前の五月五日。柏もちを食べながら、息子が私に聞きました。「なんで、きょうはこのおもちなの?」「あら、なんでかしら……」。

 調べてみました。柏の葉は冬に枯れますが、新芽が出てくるまで落ちません。その姿に子の成長を見守る親の気持ちを重ねたのだそうです。

 なんてステキな由来でしょう!

 私は一気に行事の魅力にはまり、本を読み、人に聞き、自分の記憶をよびおこしながら勉強を続けました。

 そして、日本の風土と人々が育んできた伝承文化、季節の行事─。それは豊作や健康への「祈り」と「感謝」で満ちていることを知りました。

 人々は、草や花や木など身近な自然を知恵と遊び心でうまく行事にとりこんで祝ってきたのです。すばらしい。

 そんな季節の行事を、子どもたちにわかりやすく伝えたいと思っていたところ、うれしいことに「はじめての行事えほん」のシリーズがスタートしました。「お正月」「節分」「ひなまつり」「端午の節句」「お月見」「七五三」に続き、近々「七夕」が出版されます。

 なにせ対象は二歳からです。毎回行事の要素のなかからひとつだけを選んで、シンプルなおはなしになるよう考えます。「七夕」では「笹かざりに願いをかける」ことにしぼりました。

 タイトルは「みんなのおねがい」。

 短冊に願いごとを書くようになったのは江戸時代の寺子屋が始まりと言われています。その前は「梶の葉」の裏に書いていたそうです。それなら長方形の短冊にこだわらず、もっと自由に「願い」を書きたいなと思いました。

 絵本では、動物たちがそれぞれのお願いを「絵」に描いて笹にかざります。ちなみに息子は幼稚園で七夕のお願いを聞かれたとき、「ブタになりたい」と言ったそうです。絵に描きやすいお願いですが、なぜ、ブタ? 子どもの願いは、愉快です。

 この「はじめての行事えほん」シリーズが、家族で行事を楽しむきっかけになってくれたらうれしいです。

(すとう・あさえ)●既刊に『子どもと楽しむ行事とあそびのえほん』(さいとうしのぶ/絵)など。

『みんなのおねがい』「はじめての行事えほん」シリーズ(既刊6冊、全12冊)最新刊"
ほるぷ出版
『みんなのおねがい』「はじめての行事えほん」シリーズ(既刊6冊、全12冊)最新刊
すとうあさえ・ぶん
おおいじゅんこ・え
本体950円