日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私がつくった本35
学研教育出版 大西由美子

(月刊「こどもの本」2012年5月号より)
どんぐりむらの ぱんやさん

『どんぐりむらの ぱんやさん』
なかや みわ/作・絵
2011年9月

 人気絵本作家のなかやみわ先生の最新絵本「どんぐりむら」シリーズ第2弾がこの本です。第1作目の『どんぐりむらのぼうしやさん』とともに、シリーズを通してのテーマは「お仕事」。どんぐり村のいろいろな職業を描くことで、「将来、こんな職業につきたい!」「このお仕事、おもしろそう」のように、子どもたちに「仕事」に対する夢や希望を持ってもらいたい、というのがシリーズのねらいです。

 1作目『どんぐりむらのぼうしやさん』では、読者参加型のキャンペーンを行い、読者からどんぐり帽子デザインを募集しました。そして選ばれた帽子10点を2作目で誰かがかぶって登場︱という、発表も兼ねた新作発売を企画していたため、その翌年の秋に2作目を出すことが予め決まっていました。なかや先生と一緒に、読者アンケート等を参考に職業の候補を絞りこみ、そこから、「第2弾はパン屋さんでお話ができないものでしょうか」と、提案しました。子どもにわかりやすい職業であること、子どもたちはパンが好きであること、あたたかい雰囲気が、秋から冬に向かう発売時期とどんぐりの世界に似合っていることから、「パン屋さんもいいですね」と、なかや先生も賛成してくださり、話し合う中でパン屋さんが有力候補となっていきました。

 しかし、なかや先生はご飯党で、ご家庭ではあまり、パンを召し上がらないとのこと。そこで、先生にイメージを膨らませていただくために、実際にパン屋さんの現場を見ていただこうと、東京・阿佐ヶ谷にある「ロードベーカリー」という私の行きつけのパン屋さんへ取材に行きました。朝の仕込みからパン作りの様子を見せていただき、実際になかや先生と私もパン生地をこねたりもしました。また、ご主人にパン作りや子どものころのお話を聞かせていただきました。祖父、父、今の若いご主人と、三代にわたりパン屋さんを営む地元密着型パン屋のロードさんは、偶然、なかや先生の「どんぐり村なら、こんなパン屋さんだろうなあ」というイメージにぴったりはまったそうです。まもなく「お話ができました!」と見せていただいたラフは、パン屋さんのパパママとその子どもたちが互いを思いやる家族の物語。その取材裏話は、投げ込み『どんぐり新聞』裏面の「どたばたへんしゅう裏話」に掲載しています。

 第1弾同様、カバーの袖に切り取って遊べるペーパークラフトの「ぱんやさんごっこ」、後日談や裏設定を描いた前述の『どんぐり新聞』の投げ込みをつけ、子どもたちが『どんぐりむら』の世界をたっぷり楽しめるようにしています。

 これからも、子どもたちの笑顔のため、なかや先生とともに、どんぐりたちに負けないプロの仕事を心掛けたいです。

 今秋の新作も只今準備中。ご期待ください。

どんぐりむらの ぱんやさん