日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『きつねうどん たぬきうどん』 古内ヨシ

(月刊「こどもの本」2018年7月号より)
古内ヨシさん

好きなものが一番

 僕はうどんが大好きで「もちもち、つるつる」の麺を思いっきりすするのがたまらないんです。寒さで冷え切った体が、うどんで暖まる瞬間がたまらない。いつも「何うどん」を食べようか迷った時なんて、誰かが美味しそうに食べてるのをみて、あれも美味しそう~これも美味しそうって、うどんの湯気をかぎながら良い気持ちになる訳です。

 そんなとき『きつねうどん たぬきうどん』のアイデアを思いつきました。なんだか美味しそうな出汁の色にそまった、きつねとたぬきが、何やら話をしているんです。「見つけた!」って思ったのです。それは、きつねうどんの大好きなきつねと、たぬきうどんの大好きなたぬきが、人間に化けてうどん屋さんにやってくるというお話です。

 おっちょこちょいな二人は、自分たちの正体がバレバレなことも知りません。それなのに、たくさんのうどんを食べては、毎日やってくるという底なしのうどん好き。もちろん、お金なんてもってません。ドングリと葉っぱをお金だと思っている世間知らずなんです。本当だったらたちまち捕まりこっぴどくお仕置きされて、山に追放されることでしょう。

 それで、「きつねうどんが一番」のきつねと「たぬきうどんが一番」のたぬきが、どちらもゆずらずにけんかになります。ところが、お店のおじいさんの計らいで、一緒にうどんを作る事になりました。きつねうどんを初めて食べたたぬきと、たぬきうどんを初めて食べたきつねは、相手のうどんが自分のうどんと同じぐらい美味しいことに、初めて気づきます。

 自分の意見は大事だが、人の意見も同じぐらい大事だということを、うまく伝えられたと思います。誰でも自分の好きなものが一番です。それはとっても大事な事ですが、ほかの人だってそう考えてるに違いありません。

 うどんの湯気にたくさんの笑顔が包まれますように願いをこめて作りました。

(ふるうち・よし)●既刊に『オナラせんせい』『おばけのムニムニ』『へんてこレストラン』(竹内通雅/構成・絵)など。

『きつねうどん
大日本図書
『きつねうどん たぬきうどん』
古内ヨシ・作
本体1、300円