日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

我が社の売れ筋 ヒットのひみつ2
『キャベツくん』 文研出版

(月刊「こどもの本」2018年3月号より)
『キャベツくん』
魅力的なナンセンス絵本
『キャベツくん』
長 新太文・絵
1980年9月刊行

 今年、文研出版が児童書を発刊して50周年となります。我が社の代表作の一つに、累計130万部を超えた『もこ もこもこ』(谷川俊太郎・作 元永定正・絵)があります。抽象画と擬音語で創られたこの絵本は、子どもたちが何度も「読んで!」というと聞きます。最近では、「子どもが最初に読み聞かせをする絵本」という声も聞こえてきました。兄姉が弟妹に読んであげて、子ども同士で楽しんでいるそうです。子どもの反応と口コミでヒットになったロングセラーの絵本です。

 50周年を迎えるにあたり、我が社が紹介したい作品は、長新太さんの代表作・ナンセンス絵本の『キャベツくん』です。

 おなかをすかせたブタヤマさんは、キャベツくんを食べようとします。食べられたくないキャベツくんが、ぼくを食べたらこんなふうになるよというたびに、次々に空に描かれる着想がおもしろい絵本です。子どもから大人まで愛されている理由を考えてみました。

(1) 「ブキャ!」とつい声がでる!
 キャベツくんが「こうなる!」といった次のページには、「ブキャ!」ブタヤマさんがびっくりしています。そのくり返しに子どもたちも大喜び。ブタヤマさんと一緒に驚いて思わず声がでてきます。読み聞かせの場でよく見かける光景です。

(2) やさしいキャベツくん
 ブタヤマさんがかわいそうになったキャベツくんは、「むこうにおいしいレストランがあるから、なにかごちそうしてあげるよ」といいます。自分を食べようとしていたブタヤマさんの手を引くキャベツくんと、よだれが流れているブタヤマさんの絵は何ともいえないやさしさに包まれています。

(3) 魅力が異なる「キャベツくんの絵本」
 1986年に『ブタヤマさんたらブタヤマさん』、1990年『キャベツくんとブタヤマさん』、1992年『キャベツくんのにちようび』、2003年『つきよのキャベツくん』が刊行されています。どの本が一番好きか聞いてみると様々な答えが返ってきます。『キャベツくんのにちようび』の、ネコがずらっと描かれた迫力あるページが好き。やっぱり『つきよのキャベツくん』で、トンカツ・ソースが森の中からはしってくる場面が面白いなどなど。

 今年の5月に、ある会社から『キャベツくん』がデザインされたTシャツやワンピースが発売される予定です。街中にキャベツくんとブタヤマさんの世界が溢れたら、どんなに楽しいでしょう。どんなデザインになるかはお楽しみに。

(文研出版 岩瀬友和)