日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『しんごうきピコリ』 ザ・キャビンカンパニー

(月刊「こどもの本」2017年9月号より)
ザ・キャビンカンパニー

空想の世界を楽しんで

 私たちは、二人組の絵本作家です。二人で一枚の絵を描き、二人で一つのお話を考えます。
 生まれ育った、九州の大分県に、アトリエを構え、日々絵本づくりに勤しんでいるのですが、アトリエは、家から少し離れた奥深い山の中にあるので、私たちの仕事は、毎朝車の中から始まります。朝起きて、車に乗り込むと、すぐに絵本のお話を、あれこれ考え始めるのです。アトリエまでの道中、フロントガラスから景色を眺めていると頭がスッキリし、お話のアイデアがぴーんと閃きます。
 その日も、いつものように、車で移動しながら頭をしぼっておりますと、信号待ちで、ぽそっと吉岡がつぶやきました。
「信号機って、なんで赤、青、黄しかないんだろ?」すると、
「ピンクや黄緑があったら綺麗でいいのになあ」と、阿部が言いました。
「ピンクになったら、車はどうするの?」「さかだちしたりして!」「じゃあ黄緑は?」
 ぽそっとしたつぶやきが、だんだん二人の頭の中を埋め尽くし、気がつくと『しんごうきピコリ』の世界に足を踏み入れていました。
 私たちの絵本はいつも、そういった空想話から始まるのです。おそらく生まれて一万回以上は見てきて、もう見飽きてしまった信号機も、想像を巡らすと凄く新鮮で面白いものに見えてきます。現実がつまらない時、空想の世界はとても救いになるのです。
 この絵本は、交通ルールに興味を持つきっかけにもなりますが、私たちが一番大切にしているのは、こんなことがあったら面白いな、こんなところに行ってみたいな、とみなさんに、心の底から空想の世界を楽しんでもらうことです。
 きっと信号機は、この絵本に描かれている色以外にも、まだまだ沢山の色がピコリ! と光るんだと私たちは思っております。みなさんの想像力でもっともっと『しんごうきピコリ』の世界を広げてくださいね。

(ザ・キャビンカンパニー)●既刊に『だいおういかのいかたろう』『よるです』、B・エルキン作『ねむれないおうさま』など。

「しんごうきピコリ」
あかね書房
『しんごうきピコリ』
ザ・キャビンカンパニー・作・絵
本体1、300円