日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『①自然に学ぶくらしのデザイン』 四井真治

(月刊「こどもの本」2016年10月号より)
四井真治さん

暮らしは楽しく、子どもたちの未来につながる

 私たちが暮らす星〈地球〉では、太陽の光をエネルギー源に、水、大気、土、多種多様な生きものたちの生活のつながりが循環を動かし、豊かさを生み出しています。私たち人間も、身のまわりの自然を上手に利用することでこのしくみを動かす一員となり、豊かな環境や持続可能な暮らしをつくることができます。それが本来の生活する力であり、そんな暮らしのあり方が「地球のくらし」です。
 かつて江戸の町は、百万人を超える人口をかかえた世界最大の都市でありながら「地球のくらし」が成り立ち、その後も戦中戦後のころまで、バイオマスエネルギーでほぼ100%賄うことができた素晴らしい文化をもっていました。しかし現代では、生活の便利さを追求するあまりそのような文化も忘れられ、自給率は下がり、生活の技術さえも忘れ去られようとしています。お金を払えば食べものは手に入り、遊びも誰かが用意してくれていて、親から子へ物事が伝わったり自分で手を動かして考えたりする機会が少なくなっています。
 本来、暮らしには身近なたくさんの楽しみが詰まっています。たくさんの身のまわりの生きものの存在やそれらが生み出してくれる恵み、その恵みを引き出す知恵、子どもたちがこれらを感じ、小さな楽しみから大きな楽しみとともに毎日の暮らしをつくれるようにしていくことが本来の教育ではないでしょうか?
「地球のくらし」をつくるには、土とのつながりを取りもどしたり、生きものの多様性や自然の中にあるエネルギーを生かしたりすることが大切です。この絵本では、日々の暮らしの中で自然のしくみを発見し、生かしていく楽しい工夫を紹介しました。
 生活する力とはこの地球の上で自分たち家族の豊かさや安全をいつまでも得る力であり、その集まりが持続可能な社会をつくります。持続可能な子どもたちの未来は子どもたちの生活する力にかかっています。

(よつい・しんじ)●同シリーズに『②土とつながる知恵』『③水をめぐらす知恵』『④火をあつかう知恵』『⑤自然エネルギーをいかす技』。

①自然に学ぶくらしのデザイン
農文協
地球のくらしの絵本 全5巻
『①自然に学ぶくらしのデザイン』
四井真治・著
宮崎秀人・立体美術
畑口和功・写真
本体2、500円