
なまけものくんのように ゆったりと
この絵本の依頼をいただいたのは確か二〇一三年。原案の絵コンテから始まり、数々の再考を重ね、二〇一五年の七月に月刊絵本として刊行されました。そして、二〇一六年の今年、表紙の装いも新たに市販本として刊行されました。この三年間、長かったのか短かったのかといえば、あっという間だったというのが実感です。
時間の流れの感覚は人それぞれだと思いますが、ナマケモノにとってはどうなんでしょう。動作的にはかなりゆっくりしているので、人間から見ると時間の経過は遅そうです。でも、それはあくまでも、人間目線なわけで、本人としては一日はあっという間なのかもしれません。
ナマケモノは、普段は木の上で生活していますが、週に一度ほど排泄のために木から下りてくるそうです。人間だったら、なかなかの便秘といえますが、ナマケモノにとってはむしろ快便なのかもしれません。人間の一日という時間感覚が、ナマケモノにとっての、七日間という時間感覚だとしたら? と私の勝手な妄想ですが…。
物語の中で、なまけものくんは久しぶりに出かけるのですが、とくに急ぐ様子はありません。あくまでもマイペース。まわりのスピードなんて気にせず、ひたすらマイペース。せっかちの私からしたら、うそみたいに遅いスピードですが、物語のラストでは、優しいぞうさんに助けられ、結局日が沈む前にすんなり帰ることができます。
急ぐあまり、あわててしまい結果的に倍の時間を費やすはめになることはありがちですが、なまけものくんのように、まわりに惑わされず、ゆったりと、あくまでも自分のペースをたもてば意外と無駄な時間を使わずにすむのかもしれません。
物語を通して、時間のたいせつさをなまけものくんから学んだ気がします。どうもありがとう!
(オームラトモコ)
●既刊に『なんのぎょうれつ?』『なんのじゅうたい?』『こんできました』など。
鈴木出版
『ゆっくり ゆっくり なまけものくん』
オームラトモコ・作・絵
本体1、300円