日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『ピアスの星』 赤羽じゅんこ

(月刊「こどもの本」2012年2月号より)
赤羽じゅんこさん

小さなトゲから

『ピアスの星』のもとになる短編を同人誌に発表したのは、もう十年も前になります。娘が遠足の班わけで悩んでいた頃だからよく覚えています。

 小・中学生にとって、遠足や修学旅行、様々な「班わけ」は、好きな子同士になりたい、にがてな子といっしょになりたくないと、あれこれ頭を悩ませる大問題。人づき合いがにがてな子どもにとっては、つらい時間だろうと容易に予測がつきます。

 それでなくても、思春期は、いろんなことを考え、傷つきやすいもろい時期です。娘も心にささったトゲを気にしてくよくよしていましたし、わたしにも、トゲのような言葉を投げつけてくることもありました。

 けれど、そんな風にもがいている娘を見つめる中、今しかないこの時期を物語にしてみようと思いたちました。深くささったトゲは、書きたいという意欲をおこさせました。実感があるので、主人公たちは自らよく動き、いきいきとしたセリフを語り、わたしを驚かせるほどでした。鎌倉への遠足、コンビニのあこがれのお兄さん、路上ライブ、イラストレター、次々とアイディアもわいてきました。

 ただ、それでもまだ、思いばかりがさき走った作品でした。くもん出版の編集者さんが根気よくつきあってくださり、時間をかけて仕上げたのが、今回の『ピアスの星』です。

 まるで、小さなトゲから芽がでて大きく育ち、きれいな花が咲いたようで、とてもうれしいです。

 表紙は雑貨デザイナーのtamaoさんの刺繍の力をかりました。一針一針さしていく刺繍のあたたかな風合いと、ゆっくり言葉をつむいでいったこの作品は、どこか不思議に波長が似ていて、おしゃれで気にいっています。

 たくさんの人の力を借りて花を咲かせた『ピアスの星』。すばらしい装丁でこの作品を出版することができて、わたしも、登場人物のサヤやハミとともに大きく一歩、前にふみだせた気がしています。

(あかはね・じゅんこ)●既刊に『ごきげんぶくろ』『ミキとひかるどんぐり』『おまじないのてがみ』など。

「ピアスの星」
くもん出版
『ピアスの星』
赤羽じゅんこ・著
tamao・画
本体1,400円