日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『学校に行かない僕の学校』 尾崎英子

(月刊「こどもの本」2024年5月号より)
尾崎英子さん

子供が自然でいられる場所

 中学受験を舞台にした物語『きみの鐘が鳴る』を書くにあたり、いまの子供たちの不登校事情について調べました。思っていた以上に学校に行けない子供たちが多くて驚きました。

 いやな気持ちを我慢してまで学校に通うことに意味があると、わたしも思いません。いまは保護者も、柔軟に考えられるようになっていて、そういう意味でも不登校の子供は増えているようです。時代の変化とともに、学校以外の学びの場、いわゆるフリースクールというものが増え、それぞれに特色があることを知りました。それが本書『学校に行かない僕の学校』を執筆するきっかけとなったのです。

 子供が子供らしくいられる場所って、どういうところだろうと考えた時に、『森』というのが思い浮かびました。わたし自身、森が大好きなのです。木々があり、川があり、いろんな生き物がいて、たくさんの音と匂いに溢れている。森の中にあるフリースクールがあったら、楽しいだろうな、と。楽しいだけじゃない。森という自然の中では、きっと多くの学びを得ることもできるでしょう。整然とした設備とカリキュラムは魅力的だけど、効率を重視しすぎると、大事なものを失いかねません。たとえば、人間本来の感覚を鈍らせているのかもしれない。学校に行きたくないという子供たちの反応は、本能的な防御ともいえるのかな、などと考えたりもします。

 主人公の薫は、十四歳。ある出来事をきっかけに公立の中学校に通えなくなり、父親との関係も悪くなって家にも居づらくなり、森のそばにある寮付きのフリースクールに自らの希望で入ります。そこには小学校高学年から中三までの子供たちが暮らしています。それぞれの事情を抱える友人たちと、子供たちをやさしく見守る先生らしくない先生たちとともに、薫は成長していきます。

 薫と、同級生のイズミ、銀河とともに、読者のみなさんにも『森の中の学校』を楽しんでもらいたい。学校の教室では学べないことを、薫たちとともに体感してもらえたら嬉しいです。

(おざき・えいこ)●既刊に『きみの鐘が鳴る』『竜になれ、馬になれ』『たこせんと蜻蛉玉』など。

『学校に行かない僕の学校』"
ポプラ社
『学校に行かない僕の学校』
尾崎英子・作
定価1,760円(税込)
(5月発売予定)