日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

我が社の売れ筋 ヒットのひみつ12
『わすれもの』 『おどりたいの』 BL出版

(月刊「こどもの本」2019年11月号より)

新人作家、豊福まきこさんの絵本…満を持して

豊福まきこ 作
2017年3月/2018年9月刊行

 夜のベンチにひつじのぬいぐるみが一匹、寂しそうに座っています。豊福まきこさんのデビュー作『わすれもの』です。豊福さんとの出会いは、小淵沢の「えほん村」を主宰している松村さんから「チャレンジ絵本作家さん」へ誘われた時でした。松村さんから豊福さんを紹介され、素敵な絵を描く方だなと…。その後2年が経ち、毎回別なお話を創ってくる豊福さんに「昨年の作品はどうしたの?」と尋ねると「興味を持たれなかったのかなと、思って違うお話を考えて…」。「今度はちゃんと、絵本を創りましょう」と! そして、『わすれもの』のラフを見せてもらい、直感で感じるものがあり豊福さんとのやりとりが始まりました。最初は文章が長かったので、絵で伝えられる文章はへらしました。ラフを6回ほど描き直してもらい、2017年3月に出版された『わすれもの』は、読者の心に響く素敵な絵本になりました。切なくて温かい「わすれもの」の気持ちを描いた絵本です。読者から「久しぶりに絵本の表紙にひかれました。少し疲れていた心に、絵と言葉がしみこみました…」「ひつじの気持ちが伝わり、とてもほっこりしました」などのお便りをもらいました。

 出版と同時に豊福さんは、オリジナルのひつじのぬいぐるみを作ってくれました。ぬいぐるみは、社内での研修(!?)を終え、何体かは全国の書店さんで営業をしてくれています。そんな作者のひた向きさがこの絵本にも溢れています。『わすれもの』は、現在8刷の版を重ねています。

 豊福さんの2作目になる『おどりたいの』のラフを受け取った時は感動ものでした。別に私がバレエを踊るわけではないのですが、健気に踊る子うさぎたちの姿にこころを奪われました。もちろん、出版することを即答!

 そして、2018年3月に原画が届き、会議室のテーブルに並べて編集、営業と全員で豊福さんの繊細な絵に見惚れてしまいました。

 6月には出版が可能でしたが、梅雨の時期や暑い夏ではなく営業と調整して9月発売に決めました。そうすることで、刊行前の書店さんへの売り込み期間を長くし、『わすれもの』が売れていた書店さんに販促する機会を多くしました。パネル展が可能であれば展示のお願いもしました。そして、満を持しての発売。ひと月後には重版が決定しました。

 また、イタリア・ボローニャブックフェアでも紹介し、バレエの本場の国ロシアや、アメリカの出版社からも注目され契約を進めています。現在6刷の版を重ねており、『おどりたいの』は、10月から特別に「クリスマス限定スペシャルジャケット」でお目見えします。

(BL出版 落合直也)