こどもの本

私がつくった本67
講談社 森定 泉

(月刊「こどもの本」2015年10月号より)
MOVE COMICS「昆虫のふしぎ」① 昆虫の世界へようこそ! の巻

MOVE COMICS「昆虫のふしぎ」① 昆虫の世界へようこそ! の巻
安斉 俊/漫画、伊藤弥寿彦/監修、講談社/編
2015年6月刊行

 やっぱり出版は、製造業なのだな。それも、家内制手工業のように職人たちが力をあわせた合作みたいだな、と今回の学習漫画を作る際に痛感いたしました。
 ぎりぎりのスケジュールのなか、漫画家が線画を描くのはあたりまえですが、背景は別の人間が描き、それをデジタルで取り込んで、各所に住んでいるアシスタントたちにデータで送り、デジタルトーンで仕上げをおこないました。つまり、線画・背景・スキャン・仕上げはすべて別々の人が別々の場所でおこない、それをアッセンブリするわけです。
 これは、デジタルならではの原稿の作成方法でした。そういう意味では、家内制手工業も進化しているのですね。(ちなみに、10年前の漫画原稿の作成は、漫画家の仕事場にアシスタントが詰めて原稿を仕上げるという、それこそ家内制手工業の世界でした。)
 スケジュールの管理は綱渡りのようで、冷や冷やしました。実際、人事部から呼び出されヒヤリングをされ、厚生部からは健康調査のインタビューを受けるほどハードだったのですが、頑張ったかいもあって、内容は長い時間をかけて準備していたので、漫画のひとつひとつのエピソードからコラム、さらには欄外のテキストまで、充実したものになりました。小学生向けの学習漫画とはいえ、宇宙空間でも生きのこったナンキョクユスリカの実験や、21世紀の大発見である新種の昆虫カカトアルキの紹介など、最新の情報を盛り込みました。間違いのないように、論文レベルまで確認を取り、ときには、海外の論文まで読み込んで、漫画のエピソードやコラムに活かしました。 
 漫画という、わかりやすい入り口ではありますが、それを読んだ読者は、楽しみながら専門知識を得られるわけです。現在、さまざまなタイプの学習漫画が市場にはありますが、本来の学習漫画とは、そういうものだと考えています。
「MOVEコミックス」は、「図鑑MOVE」で、昆虫をはじめ、恐竜や動物、宇宙などの自然科学の世界に興味を持った子ども達が、次に読むシリーズとして企画しました。小学生はブルーバックスや岩波新書は読めなくても、漫画なら読めます。高度な内容も、表現を工夫すれば、おもしろく伝えられるはずです。
 奇しくも、弊社には「おもしろくて、ためになる」という基本理念が出版活動の根底にあります。このたび、創刊した、「MOVEコミックス」のシリーズは、まさにその基本理念にのっとったシリーズだと自負しています。 
 船出したばかりの新しいシリーズですが、子ども達をはてしのない知識の世界へ案内できることを願っています。