日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『ともだちって だれのこと?』 岩瀬成子・作 中沢美帆・絵

(月刊「こどもの本」2015年10月号より)
中沢美帆さん

森の小さきねずみくん

『ともだちって だれのこと?』は、主人公のねずみくんが、ちょっとした行き違いで、テンとの友情に疑問を感じることから始まるお話です。「友達って、もしかしたらぼくのことじゃないのかもしれない…」ねずみくんは自分に自信をなくして、不安が心に広がります。私も、子どもの頃に感じた友達への不安や悩みが心によみがえってきて、胸がざわざわとなりました。
 それでも、ねずみくんはいつまでもクヨクヨしていません。テンの友達ってだれなのか、真相を確かめるために立ち上がり、森へと出かけて行きます。小さくて勇ましいその姿は、好きにならずにいられません。
 森の中で、ねずみくんは動物達にテンのことを聞いてまわります。でも、みんなはそれぞれ気ままな時間を過ごしていて、ねずみくんの心配事など、全く気づきません。あまりに呑気な様子に、思わず楽しい気持ちになってしまいます。登場する動物達の個性を感じることができるのも、このお話の魅力のひとつだと思います。
 絵を描く時にも、それぞれの性格に合った容姿を描くことを、かなり心がけました。私の絵は切り絵なので、上手くいかなければいかないほど、切り取られたモチーフが、どんどん机の上を占領していきます。動物達を描いている時も、なかなか思うような姿にならず、特にねずみくんは、ちょっとした大きさの、ねずみの山が出来上がりました。それでも描き続けていると、ある時突然、水色の上着を着た小さなねずみくんが、前からずっといたような顔をして、紙の上にいるのです。少し前までいなかったのが、不思議になります。
 そうして出来た、ねずみくんのちょっと大変だった一日の絵本。共感したり、お気に入りの動物やモチーフを見つけたりして、さまざまに楽しんでもらえたら嬉しいです。

(なかざわ・みほ)●既刊に『お日さまとトナカイ シベリア・極東のむかしばなし集』(むらやまあつこ/訳)。

『ともだちって だれのこと?』
佼成出版社
『ともだちって だれのこと?』
岩瀬成子・作 中沢美帆・絵
本体1、300円