日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『特別な一ぴき』 岡田朋子

(月刊「こどもの本」2015年4月号より)
岡田朋子さん

特別な一ぴき

 私が住んでいる街では、人も動物も笑顔で暮らし、保健所で殺処分される犬や猫は一匹もいません。飼い主がどうしても飼えなくなったら、新しい家族を探します。野良猫という言葉はなく、地域の猫としてみんながお世話をしています。そんな世の中になったら良いなあと思い、十四年前に小さな動物愛護団体を立ち上げました。

 発足当時は、日本全国で年間四〇万頭以上の犬や猫が殺処分され、私が住む街でも多くの犬や猫がゴミ焼却場の片隅で命を失っていました。保健所の冷たいコンクリートの上で冬の寒さに震え、寒さのせいで殺処分の日を待たずに命を落とすこともあったのです。

 ささやかな活動として、保健所にいる犬や猫のために古毛布を届けることから始めました。捨てられた犬や猫の新しい飼い主探しをしているうちに、子どもたちに命の大切さを伝えたいと思うようになりました。子どもは大人を見て育ちます。次代を担う子どもたちに、不幸な命のない社会を築いて欲しいと思ったのです。

 学校からの依頼内容は命の大切さだけでなく、ボランティアの意味や、弱者に対する思いやりなどさまざまです。小学校低学年の子どもにもきちんと殺処分の現状をお話しして、どうしたら良いかを考えてもらいます。かつて人に捨てられて今は幸せに暮らす犬や猫を同伴して、どんな過去があったのか、どうしたらお友達になれるのか、それぞれがたった一つしかない大切な命だとお話ししています。

 何と言っても、子どもたちが一番喜ぶのは動物たちとのふれあいです。言葉で話すよりずっと多くのことを感じてくれるように思うこともあります。そして、子どもたちの輝く笑顔を見ていると、人にも動物にも幸せな社会が見えてくるようです。この本を通して、誰もが持っているやさしい気持ち、ありがとうの気持ち、小さな命を大切にする気持ちが伝えられたらうれしいです。すべての動物たちが「特別な一ぴき」でありますように。そのやさしさが多くの人の心に灯りますように。

(おかだ・ともこ)●本書が初めての著作。2015年夏『ぼく、こねこひろっちゃった!?』を出版予定。

「いのちの授業 特別な一ぴき どうして、犬ってすてられちゃうと思う?」
国土社
『いのちの授業 特別な一ぴき
どうして、犬ってすてられちゃうと思う?』
岡田朋子・文
本体1,300円