こどもの本

私の新刊
『おしゃれ教室』 灰島かり

(月刊「こどもの本」2015年2月号より)
灰島かりさん

ぶつかるからこそ、受け入れられる

 アン・ファインは、イギリスきってのリアリズムの児童書の書き手です。アンが『おしゃれ教室』で描くのは、自分の外見についてあれこれ悩む女の子たち。女の子たちがどれほど自分の外見で悩むか、元女の子の私も身に染みて知っています。やれ目が小さいの、顔がでかいの、そして極めつけは太っている! 主人公のボニーはアンチおしゃれ派ですが、外見の悩みを乗り越えてきました。おしゃれ派の女の子たちは自信たっぷりに見えても、実は不安でたまらない……。そんなあぶなっかしい女の子たちを、アン・ファインはとびきり愉快なストーリーを繰りひろげて、応援してくれます。

 もうひとつこの本の特長は、魅力的なけんかが描かれていること。以前から、子どもたちにけんか、わけても口げんかの仕方を教えてくれる本があるといいな、と思っていました。私が出会う子どもたちは、小学生から大学生まで、友人とうまくぶつかる方法を知らないように思えてなりません。あまりにも傷つきやすくて、友人とぶつからないように努力するあまり、かえって友情を育てられずにいるようです。

 そこでアン・ファインを一服。子どもたちの会話を描写する力が抜群なので、丁々発止のやり取りのおもしろさには、うっとりするほど。主人公のボニーが友だちになりたいと切望するのが、おしゃれ派のアラミンタですが、ふたりはぶつかりにぶつかります。

 アラミンタ「あんたの頭の上にあるのは、なによ。ぞうきん? まちがっても、かみの毛には見えないけど」

 ボニー「あんたは、人からすかれたことは一度もないよね? 絶対すかれないタイプだから」

 友だちになりたいからこそボニーの攻撃はエスカレートして、やがて本当にお互いを深く傷つける結果を招きます。そこからどうやって立ち直るのか? お笑いたっぷりに、しかしお笑いのすきまに人生の知恵をたっぷりつめこんで書かれています。子どもたちが「こんなのもありなんだ……」と思ってくれるといいなと願っています。

(はいじま・かり)●既訳書にA・ファイン『チューリップ・タッチ』、R・ダール『へそまがり昔ばなし』など。

「しゅくだいさかあがり」
評論社
『おしゃれ教室』
アン・ファイン・作
灰島かり・訳
本体1,000円