こどもの本

私の新刊
『タイムライダーズ』 金原瑞人

(月刊「こどもの本」2015年2月号より)
金原瑞人さん

女の子も夢中になる冒険SF!

 エリナー・ファージョンというイギリスの児童文学作家の短編に「ムギと王様」というのがある。現実離れした少年ウィリーがいきなり、おれの父さんはエジプトの農夫でムギを作ってたんだ、などと話しだす。エジプトといってもラー王のいる古代エジプトだ。

 この話を、女子大の英語のテキストに使ったところ、ある学生が授業後にやってきて、「なんで、今のイギリスの男の子のお父さんが昔のエジプトに住んでるんですか?」。

 えー、だって、これ、フィクションじゃん……とは思うものの、真剣な顔でこちらを見ている女の子に、そんな言い訳は通用しそうにない。「男の子の想像の話だと考えればいいんじゃないか」と答えたものの、心の中では、そうじゃない、フィクションなんだ、だからおもしろいんだってば……と叫んでいた。タイムスリップ物は、たまにこういう悲喜劇を呼ぶ。不思議と男の子は平気だ。

 科学的な知識を駆使した(かに見えるけど、じつは表面的でいいかげんなものが多い)SFも男の子の世界なのかもしれない。なにしろ絶対に嘘っぽい、未来に見せかけてるけど、絶対そんな未来はきそうにない、そんな世界が舞台なのだ。頭のねじのゆるんだ…いや、想像力が似非科学的に豊かな男の子しかついていけないだろう。

 この作品にしても、一九一二年のアイルランドの少年、二〇一〇年のアメリカの少女、二〇二六年のインドの少女、そして遺伝子操作で作られたスーパーヒューマン、この四人が時間犯罪者を追う。タイムマシンを悪用した犯罪者によって、第二次世界大戦でドイツが勝ってしまい、怖ろしい未来が出現してしまったという設定だ。

 いかにも男の子好みの設定・展開・エンディング!

 絶対に男の子の読むベストセラーになると確信して訳したのに、次々にくる「おもしろい!」という反応は女の子からで、書評で最初にほめてくれたのも小谷真理さん。最近は女の子までが冒険SF小説に夢中になるのかと認識を新たにしてしまった。

(かねはら・みずひと)●既刊に『仮名手本忠臣蔵』『翻訳のさじかげん』、既訳書にR・ペック『豚の死なない日』など。

「しゅくだいさかあがり」
小学館
『タイムライダーズ』(既刊2冊)
アレックス・スカロウ・著
金原瑞人、樋渡正人・訳
本体各1,400円