日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『身長と動物と初めての絵本』 聞かせ屋。けいたろう

(月刊「こどもの本」2014年12月号より)
聞かせ屋。けいたろうさん

身長と動物と初めての絵本

「いやだ! いやだ! うわ〜ん‼」2013年春、千葉駅近くの保育園。わたる君(3才)が、身長測定をいやがって、泣いている。アルバイト保育士としてそれを見ていた僕は、「子どもたちがもっと身長測定を楽しんでくれるといいな」と思った。それから、「動物が身長を測っていたらおもしろいなぁ。子どものようにいやがるのだろうか?」と考えた。そのおもいつきは、「キリンのしんちょうけい、ぞうのたいじゅうけい」という題のお話になった。そして、絵本の編集会議へ。一時は「どうぶつけんこうしんだん」になったりもしたが、最終的に「どうぶつしんちょうそくてい」として完成した。

 大きくなりたい願望を、動物たちは体で示す。ウサギは耳をぴん! と立てて、ワニはズルをして3匹積み重なる。子どもが、ちょっと背伸びをしたくなる気持ちと重ねて。できた文章を、絵描きの高畠純さんに渡すと、測定係のゴリラ先生と、人間の女の子を描き添えてくれた。女の子がいることで、子どもたちと動物の大きさが比べられる。「こうして、お話が絵本になっていくのか!」と、僕は感動した。そして、ラフスケッチを保育園の子どもたちに読み聞かせた。

 上野動物園には、何度も取材に行った。実際に、動物園での身長測定はない。でも、絵本のように実際に測らせてもらった。あばれるウサギにあやまりながら、メジャーを当てて40㎝。ワニはこわいので、ガラス越しにメジャーを当てて、50㎝。キリンは、高すぎて大変! メジャー代わりに長い竹の棒を立てて、何とか計測。保育園よりずっと手のかかる身長測定だった。

 動物園の皆さん、そして動物たちに多大なご協力を頂いてできた、初めての絵本。動物園のにおいがしたら、うれしいなぁ。路上から絵本の読み聞かせを始めて8年。まさか自分が絵本作家になるとは、信じられない。なんて、ありがたいことだろう! 発売後、夜の路上で読んだ。相変わらず北千住駅前で、仕事帰りの大人たちにむけて。

(きかせや・けいたろう)●既刊に『絵本カルボナーラ おいしい絵本を召し上がれ!』。

「スナーク狩り」
アリス館
『どうぶつしんちょうそくてい』
聞かせ屋。けいたろう・文
高畠 純・絵
本体1,300円