日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『だるまさんかぞく うみへいく』 高橋和枝

(月刊「こどもの本」2014年8月号より)
高橋和枝さん

愛おしい だるまさんかぞく

 だるまさんかぞくについてのお話の二作目の絵本を作ることができました。

 雑誌に掲載された私のだるまのイラストをたまたま見た教育画劇の編集者さんが「だるまの絵本を作りませんか」と声をかけてくださったことから、この絵本づくりが始まりました。

 編集者さんは言いました。

「高橋さんのだるまは、だるまであることに誇りを持って生きているんだと思います。」

 私の描いたオチのない冗談のようなイラストにそんな深遠な意味を見つけてくださったとは…とびっくりしたものです。

 一作目の『もりのだるまさんかぞく』では、もりのマンションに住むだるまさん家族の暮らしぶりを描きました。マンションには他に熊やねずみが住んでいます。だるまさんたちは、そもそもは置物…あるいは玩具なので、マンションのほかの住人たちとは色々なことが違っており、マンション暮らしが彼らの生活にフィットしないことも多いのですが、少しでも心地よく暮らそうと色々な工夫や苦労をしています。苦労を苦労と思っている様子はなく、みんなと違っていることを当たり前のこととして受け入れ、淡々と生活しています。

 絵本を作っている過程で、私は「ああ、そうか」と、編集者さんがおっしゃった最初の言葉の意味がわかるような気がしてきました。だるまさんたちは、他者との違いから生じる困難を、ただすこし不便なものとしてのみとらえ、自分がみんなと違うことに臆していません。それどころか、だるまゆえのおかしな工夫を前にして「なにしろわれわれはだるまなのですから!」と胸を張る勢いです。恥ずかしがるよりもむしろ自慢なのです。そんなだるまさんたちを、立派だなあと思い、一方で、ちょっと滑稽だなあと愛おしく思います。

(たかはし・かずえ)●既刊に『もりのだるまさんかぞく』『あめのひのくまちゃん』『りすでんわ』など。

「だるまさんかぞく うみへいく」
教育画劇
『だるまさんかぞく うみへいく』
高橋和枝・さく
本体1,100円