日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『リボンちゃん』 細川貂々

(月刊「こどもの本」2014年6月号より)
細川貂々さん

私のあこがれ リボンちゃん

 私は、自分に息子が生まれたことがきっかけで、ずっと「絵本の仕事をしてみたい」と思ってました。息子に絵本を読んできかせたときの楽しそうな表情を見るのが大好きだったのです。いつか自分で描いた絵本を息子に見せたいと思って雑誌のインタビューで「今後やってみたいことは何ですか?」と質問されたときは必ず「絵本の仕事をしたいです」と答えてきました。

 そうしているうちに絵本作家のサトシンさんとお仕事をさせてもらえることになり、うれしいことに二冊目のお声をかけていただくことができました。それが今回の新刊『リボンちゃん』です。
 お話に出てくるキャラクターは私がなりたかった理想の自分でした。

 私は『ツレがうつになりまして。』という夫のうつ病体験を描いたコミックエッセイを出しましたが、本を出版した後たくさんの人から悩み相談を受けるようになりました。いろんな人の悩みを聞いているとき、いつも私は「ああ、私に魔法が使えたらみんなの悩みを一発で解決できるのに」と思っていました。リボンちゃんはリボンの魔法で街中の人達の悩みを解決していきます。そうして自分のリボンで人々をつなげていきます。最初にこのお話を読んだとき、私もリボンちゃんみたいにいろんな人を助けてあげたかったなあって思いました。でも、今私は「リボンちゃんの絵を描く」ということで、自分がなれなかった自分を表現できるんだ!と思いました。私が絵を描いたリボンちゃんの絵本を読んでひとりでもたくさんの人が安心したりホッとしてくれたら私のあこがれが叶うんだって思いました。

 完成した「リボンちゃん」を息子に読んであげたら楽しそうに大声をあげて笑いました。私が見たかった笑顔を見ることができてまたひとつ夢が叶ったと思いました。

 これからも、読んだ人がホッと出来るような、子供のニコニコ笑顔が見られるような絵本の仕事に携わっていけたらいいなあって思います。

(ほそかわ・てんてん)●既刊に『いぬがかいたかったのね』『大ドロボウ五十五えもんの一日けいさつ署長』(共に絵)など。

「リボンちゃん」
文溪堂
『リボンちゃん』
サトシン・作
細川貂々・絵
本体1,300円