日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『フラワー・フェアリーズの日記 妖精の冬の家』 はしもとすみれ

(月刊「こどもの本」2014年4月号より)
はしもとすみれさん

英国レディの気分で

 シシリー・メアリー・バーカーと聞いてぴんとこない方も、ちょっと前に(あっと訂正、かなり昔に)少女だったなら、表紙のイラストを見たとたん、「ああ、これ!」とにっこり笑うことまちがいありません。懐かしの高級チョコレート、森○ハイ○ラウンのおまけの妖精カードを、胸をときめかせて集めませんでしたか? キュートなのに緻密で、リアルなのに幻想的、そんな魅力あふれる花の妖精たちがフラワーフェアリーズです。

 英国の挿絵画家シシリーが『花の妖精』詩画集を発表したのは、主に一九二〇年代から一九四〇年代にかけて。彼女は一九七三年に七七歳で亡くなりましたが、フラワーフェアリーズはしかけ絵本の中によみがえりました。  本書は一冊丸ごと、ある冬にシシリーが書いた日記になっています。花が咲かない寒い冬、住む場所のないバラの妖精のために、端切れや苔を使ってシシリーが〝冬の家〟を作ってあげる様子が綴られています。日記は、「こんなことがあったわよね」と未来の自分へ語りかけているとも言えるので、翻訳するときは、「ねえ、聞いて」「なにがあったと思う?」と会話ふうにしました。シシリーの時代のレトロな雰囲気を感じてもらいたくて、「~ですもの」「~じゃなくって?」とちょっぴりエレガントにした部分もあります。英国レディの気分にひたってもらえたら嬉しいです。

 しかけ絵本ならではの楽しさとしては、一ページ一ページに封筒や絵ハガキが貼りつけられてコラージュのようになっています。それをめくったり開いたりしてシシリーからのメッセージを見つける楽しさといったら! 大人でさえそうですから、小さな女の子はどんなにわくわくどきどきすることでしょう。目を輝かせて覗きこむ姿を思い浮かべるだけで、わたしも幸せになります。

 乙女の夢が詰まったこの絵本を、「わたしの宝物!」と言ってぎゅっと抱きしめてもらえたらいいな。

はしもと すみれ●既訳書に『フラワー・フェアリーズの日記』、『ファースト・ラブ』『世界の探検大百科』(以上共訳)など。

「フラワー・フェアリーズの日記 妖精の冬の家」
大日本絵画
『フラワー・フェアリーズの日記 妖精の冬の家』
シシリー・メアリー・バーカー・作
はしもとすみれ・訳
本体3,000円