日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『ウマがうんこした』 福田幸広

(月刊「こどもの本」2014年4月号より)
福田幸広さん

「生きている証」を撮る

 野生動物の撮影で普段から気を付けていることは表面的な美しさだけにとらわれないということ。馬の撮影も然り。

 新刊『ウマがうんこした』の舞台は宮崎県都井岬。起伏に富んだ丘に、抜けるような青い海が背景に写りこむ素晴らしい撮影場所だ。どの場所に馬がいても絵になってしまう。しかし、背景の美しさにまどわされたまま撮影していては馬の本当の姿は見えてこない。

 仕上がった写真を並べてみると絵葉書が並んでいるように見えるだけで、どこか物足りなさを感じてしまう。それはなぜかと考えれば画面から「生きている証」が見えてこないからだ。

 何を食べ、どのように眠り、どこを歩き、誰と遊び、どうやって恋をするのか、その動物ならではの生きている証はいくらでもある。私はその「生きている証」をこそ撮影したいと思っている。しかし、これらの撮影は意外にも難しいものだ。

 実際の撮影には不断の観察が必要となる。私は新しく撮影する動物の事前学習をあまりしない。不要な先入観を持たずありのままの姿を見て、自分でどんな動物かを判断したいからだ。

 ウマはよくうんこをする。その意味を考えながら撮影をしたのが『ウマがうんこした』だ。「うんこ」を一つの鍵とし、撮影に集中した。「あっ、うんこした」、「あっちでも、うんこした」と丘の上で叫びながら撮影したのを思い出す。本のタイトルはこの時の叫び声から付けたものだ。

 ウマはうんこのにおいで誰の物かわかる。私は何度もウマのうんこのにおいを嗅いでみたが、その違いはさっぱりとわからなかった。

 ウマがうんこのにおいのどんな部分を嗅ぎ分け、個体識別して記憶しているのか。できることなら自分で嗅ぎ分け写真にしてみたかったが、そこまで写真で表すことはできなかった。

 しかし、ウマとうんこの関わりはこの本で分かっていただけると思う。そして、少しでも多くの方に馬の違った一面を楽しんでいただきたいと思っている。

(ふくだ・ゆきひろ)●既刊に『ラポラポラ 森にすむ妖精』など。

「ウマがうんこした」
そうえん社
『ウマがうんこした』
福田幸広・しゃしん
ゆうきえつこ・ぶん
本体1,200円