日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私がつくった本52
あすなろ書房 山浦真一

(月刊「こどもの本」2014年2月号より)
盆栽えほん

盆栽えほん
大野八生/作
2013年10月刊

 編集者生活、三十年。思えば、本の中でいろんな植物を育ててきた。『木を植えた男』では、南仏の荒れ果てた土地にドングリを植え、カシワやブナの森を人知れずよみがえらせた。『種をまく人』では、アメリカはオハイオ州クリーヴランドの貧民街の一角に、マメを植えたのをきっかけに、ごみ溜めを菜園に変え、新たなコミュニティーをつくりだした。『おおきな木』は、最初から「おおきな木」だったので、「育てた」とはいいがたいが、その生涯をしかと見届けた。

 そして! このたび満を持して、世に送りだした『盆栽えほん』(大野八生・作 本体一四〇〇円)。今度はすごい! 登場する植物七十四種! 盆栽の育て方、楽しみ方を、わかりやすく紹介した入門絵本。弊社のかくれたベストセラー『「和」の行事えほん① 春と夏の巻』『「和」の行事えほん② 秋と冬の巻』に続く、「和」の心が楽しく学べる知識絵本である。

 盆栽のいいところは、庭がなくても木が育てられること。なんとなく難しそうなイメージのある盆栽だが、なかなかどうして! 実は、案外気楽にはじめられるのである。本書は、育てやすい木の種類、苗の選び方、日々のお手入れのポイントなど、初心者にもわかりやすく、イラストつきで解説している。

 シブイ松や梅ばかりでなく、苔玉にワイルドストロベリーと雪柳を植えて、水盤の上に置いたり、鉢のかわりに軽石や溶岩に植物を植えこんだり……。手軽に盆栽を楽しむためのアイディアが満載。日本古来の植物の愛で方と、その「和」の心を、今の暮らしに活かして四季を楽しむコツがわかる。

 ところで、そもそも普通の鉢植えと、盆栽の違いって、ご存じですか? ぼくは、ただ木を大きくせずに小さい鉢で育てるのが盆栽なのかと漫然と思っていたのだが、実は明確な違いがあったのである!知っているようで知らないこと、実はたくさんある。普通の鉢植えと盆栽の違い、知らない方は、ぜひ本書を手にとってみてください。

 本づくりは、木を育てることと似ている。『木を植えた男』をつくったころは、タネをまいたところで満足していた。よい本は自然に売れると信じていたし、売るためのノウハウもまだよく知らなかった。でも、どんなにいいタネも、ちゃんと水をあげ、手をかけなければ、大きく育たない。本も同じ。いいタネを、よりよい本に仕上げ、効果的に宣伝し、たくさん売る。いい本ほど、多くの人に読んでもらいたい! そのためにはどうしたらいいのか、日夜、考えている。

 まだまだ発展途上。だけど、弊社はあすなろ書房。「明日はヒノキになろう」の「あすなろ」らしく精進していきたい。