日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『山田県立山田小学校ポンチでピンチ!? 山田島』 山田マチ

(月刊「こどもの本」2013年12月号より)
山田マチさん

日常をおもしろがる

 私の名前は、「山田マチ」と言います。これまでに、「山田商店街」「山田動物園」「山田職業案内所」「山田町掲示板」…などなど、架空の町「山田町」で巻き起こる小さな物語を書いてきました。

 はじめての児童書となる今作では、「町」を飛び越して、架空の「県」をつくりました。

 日本の48番目の県である山田県は、山田県庁のとなりに山田城があり、お殿様がくらしています。山田湾に流れ込む山田川には、「みどりのおじさん」と呼ばれるカッパが泳いでいて、登下校時には川のパトロールをしています。四年一組は、クラスメイトに山田流の忍者がいます。忍者ですから、姿を見せることはありませんが、教室のどこかにいて、みんなと一緒に授業を受けています。

 ちょっとヘンな県にある「山田小学校」に通うこどもたちは、いたって普通です。主人公のカナタは、そのなかでもとりわけ平凡な男の子。

 魔法の国に迷い込むような大冒険ではなく、日常のすぐとなりにあるような、生活感のあるファンタジーをめざしています。

 私が物語を書く目的は、おとな向けであっても、こども向けであっても、ただひとつ。それは「鼻で笑ってほしい」ということです。ゲラゲラやワハハというよりも、くすくす、にんまり、くくくく、というように。図書館や、教室での読書の時間など、声を出してはいけない静かなときに吹き出しそうになって、「声をおしころして笑う」という体験を、こどもたちにぜひしてもらいたいです。

「おもしろい」ことがたくさんある人は、「おもしろがれる」人だと思います。日常のあちらこちらに「おもしろ」のヒントはちらばっています。

 担任の先生が、実は悪と戦うヒーローだったら……、校庭の百葉箱のなかに小さなおじさんが住んでいたら……。身近にあることから想像力を広げ、日常をおもしろがるきっかけになったら、うれしいです。

(やまだ・まち)●続編に『山田県立山田小学校 山田伝記で大騒動!?』、他の既刊に『山田商店街』がある。

「山田県立山田小学校ポンチでピンチ!?山田島」
あかね書房
『山田県立山田小学校ポンチでピンチ!?山田島』
山田マチ・作
杉山 実・絵
本体1,000円