日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『ウリオ』 室井滋

(月刊「こどもの本」2013年10月号より)
室井滋さん

楽しさがウキウキ伝染!

 私は永らく女優業の傍ら、雑文を書いています。

 二〇一一年五月に絵本『しげちゃん』(金の星社)を出したのも、「週刊文春」の「すっぴん魂(こん)」という連載エッセイで、十二年間にわたり、長谷川義史さんにイラストを描いていただいたのがキッカケ。長谷川さんの個展に伺った折、出版社の方に「絵本、興味ありますか?」と誘われたのです。

 子どものいない自分はこれまで絵本の世界とは無縁でしたが、愛猫六匹との暮らしが私を母のようにしてくれたりしていたようで、ひとたび足を踏み入れた途端、ピタリとはまった感じ。作品作りがスラスラ進みました。

『しげちゃん』で絵本デビューした後、手作りの絵本ライブを長谷川さんはじめ、大友剛さん(ピアノ)や岡淳さん(サックス)と一緒に月に二回程のペースで催していますが、これもまた、自分達自身が遊ぶようにして、とても楽しんでいます。

 出演者のウキウキ気分が子どもたちやお母さんたち、先生たちにも伝染するみたいで、会場はいつも大盛り上がりです。

 実は、絵本第二作『ウリオ』もそんな中で生まれた絵本なんですよ。

 朗読や歌、手品やパフォーマンスの間に、私と長谷川さんのマッタリとしたトークが挟まるんですけれど、たまたまある日のテーマが「心が通ったあの瞬間」だったんです。私が、「長野在住の友人一家とイノシシの間に起きた事件」を紹介したところ、これがすごい反響でした。

 ライブ後のサイン会で、「さっきのイノシシの話、ぜひ読みたい」と、何人ものお客様からリクエストをいただきまして……。そうだ、これを全国の良い子にライブで紹介したいと仲間とも盛り上がったという次第。つまり『ウリオ』は、ライブのお客様が応援してくださってできた作品なのであります。

(むろい・しげる)●既刊に『ドレスよりハウス 家を建てて一人前!』『マーキングブルース』など多数。

「ウリオ」
世界文化社
『ウリオ』
室井 滋・文
長谷川義史・絵
本体1,300円