日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私がつくった本46
国土社 野村賢正

(月刊「こどもの本」2013年7月号より)
ぱんつくったよ。

『ぱんつくったよ。』
平田昌広/作、平田 景/絵
2013年4月刊

 昨年の7月14〜16日、海の日を含む三連休に「親と子の絵本ワールドinいしかわ」が石川県金沢市の北國新聞社赤羽ホールで開催されました。最終日はフェーン現象で気温が急上昇、38度以上の猛暑日でした。私も当協会の一員として手伝いに行き、会場隣の木陰で休憩(さぼっていたのではありません)していました。

 ふと横を見ると仲良くかき氷を食べている一組の男女がいました。その二人は「夫婦よみ」で有名な平田昌広・景夫妻でした。ちょうど徳間書店から『だんごうおです。』が発売され、絵本ワールドでの「夫婦よみ絵本ライブ(夫婦二人で掛け合い漫才のように行う絵本の読み聞かせ)」のために来ていたのです。声をかけると気軽に答えてくれ、なんとなく出版業界の話になりました。偶然にも共通の知人がいることが分かり、たちまち親しい会話になりました。

「東京に帰ったら一緒に絵本つくりましょう」「ええ喜んでかきますよ」と社交辞令のような挨拶をして別れました。

 秋になり平田夫婦は、相変わらず全国を「絵本ライブ」や「原画展」などで飛び廻っています。一方国土社の編集会議では「久しぶりに絵本を出版しよう」と盛り上がっています。「ところで誰にかいてもらうの?」「もう決めてあるんだ」と私。そうです、平田夫婦に頼もうと決めていたのです。そんなワケで2か月ぶりに平田夫妻へ連絡をしました。

「平田さんですか? 絵本つくりましょう」

「本当ですか? うれしいな」

 ところがちょうどこの時、日本の近くに大型の台風が近づいていました。さいわい訪問する日の2、3日前に台風は去っていましたが、平田夫妻が住む神奈川県の三浦海岸を直撃、京浜急行は、土砂崩れで運休に。その時の平田さんの『オフィスまけ』ツイッターでは「国土社の野村が台風を連れてきた」とか「野村さんは台風と友だちらしい」との情報が飛び交っていました。お伺いする当日も途中で乗り換えないと三浦海岸には、行けませんでした。

「ことばあそびの絵本をつくりましょう」

「え? どんなかんじの絵本ですか?」

「たとえば『ここにほん(ここ日本)・ここに、ほん(ここに本)』みたいな句読点をかえると意味が変わってしまう、おもしろい絵本です」

「え! え! それって前に企画して出版社に持って行ったんですが良い顔をされず、ボツでした」

「見返してやりましょう」

 こうして絵本『ぱんつくったよ。』の企画がスタートしました。私としては、忘れられない感慨深い絵本となりました。何回もダメ出しをし、かき直しに辛抱強く付き合ってくれた平田夫妻には本当に感謝しています。