日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『天才ジョニーの秘密』 こだまともこ

(月刊「こどもの本」2013年7月号より)
こだまともこ さん

天才ジョニーは、良い子、悪い子?

 子どものころ活字の虫だったわたしは、家で三紙とっていた新聞をすみからすみまで……ではなく、すみっこのほうから読むのが好きだった。投書欄、訃報といった類の小さな記事である。特に従業員募集の三行広告は大人の世界に通じる小さなドアのようで、活字虫の妄想をかきたてた。「委細面談」の略字「細面」が良く出てくるので丸顔より細い顔のほうが就職に有利なのだと思ったりしていた。バカな子である。

『天才ジョニーの秘密』のジョニーは利口な子である。第一次世界大戦が終わって十年たらずのイギリスの小さな村で、戦争未亡人の母と暮らしながら、新聞配達のアルバイトに励んでいる。なんとも健気な良い子といいたいところだが、じつは、なかなかのワル。新聞広告を使った詐欺の天才なのだ。自分自身が新聞広告の詐欺に引っかかってお金を巻きあげられたのが悪事に手を染めるきっかけだったが、知恵を働かせてインチキ広告を作っているうちに商売繁盛。ジョニー君は有頂天。ところが、母親が殺人の容疑者として逮捕されてしまい、不幸のどん底につき落とされる……。

 けっこう厚い本だが、前半はインチキ広告の秘密がばれるのでは……とドキドキしながら、後半は真犯人を早く見つけないと母親の命が……とハラハラしながら一気に読めてしまう。井筒啓之さんの装画もとても素敵なので、ぜひぜひ手にとってください!

 作者のエレナー・アップデールさんには、昨年の夏にロンドンの大英図書館で初めて会った。つやつやした顔の元気な方で、オクスフォード大学を卒業したあとBBCでラジオやテレビの番組を作っていたというが、そのころの姿を彷彿とさせるようなきびきびした物腰が印象的だった。子育てのためにBBCを辞めた後に大学で勉強しなおして歴史の博士号をとったり、いろいろな社会事業に携わったりと、作品を書く以外にも、エネルギッシュな活動を続けているとか。これからどんな作品を書くか、注目していきたい作家のひとりだ。

こだまともこ●既訳書にJ・エイキン『ダイドーと父ちゃん』、G・チョールデンコウ『アル・カポネによろしく』など。

「天才ジョニーの秘密」
評論社
『天才ジョニーの秘密』
エレナー・アップデール・作
こだまともこ・訳
本体1,600円