こどもの本

私の新刊
『道はみんなのもの』 岡野富茂子

(月刊「こどもの本」2013年6月号より)
岡野富茂子さん

絵本の力を信じて…

 今から三十年も前のこと、私は『道はみんなのもの』の舞台であるベネズエラのカラカスに住み、そこで長男を出産しました。

 当時のカラカスは治安が悪く、子どもたちは室内で遊ぶか鉄格子に囲まれたマンション敷地内の小さな庭で遊ぶしかありませんでした。その有様に衝撃を受けた私は、遊びの大切さを意識するようになりました。そんな時に知人からいただいたのがこの絵本でした。

 長男が二歳になる頃帰国。日本には子どもたちの豊かな遊びの世界があると期待していましたが、自然空間や空き地は姿を消し、日本でも子どもたちがのびのびと遊べる環境はなくなっていました。こんなふうで子どもたちは健やかに育つのだろうか…と危機感を持った私は、子どもの遊びの環境作りに奔走し、やがてプレイパークという取り組みに出会いました。禁止事項を極力なくし、子どもたちが自分の意思で自由に思いっきり遊べる冒険遊び場です。子どもたちが本来の遊びを取り戻すには、もはやこうした取り組みが必要と感じ、紆余曲折を経て横浜の港南台にプレイパークを立ち上げました。ターザンロープやたき火、泥んこ遊びや水遊び、ベーゴマ、チャンバラ、基地づくり…子どもたちはその時の思いに添って自分の「今」を過ごしています。

 まさに、この絵本のストーリーのようなことが、遠く離れた日本の地で実現したのです。私の活動はプレイパークだけでなく、子育て支援者の連絡会やまちづくり活動にも及んでいます。ベネズエラで受けた衝撃とこの絵本がきっかけに私の今があります。

 横浜市では行政の支援もあり、今や二十五団体が立ち上がり何らかの形でプレイパークを展開するようになりました。それでもまだ子どもたちの日常の遊びに十分とは言えません。

 このたび夫の助けもあって日本で出版されたこの絵本。もしまた誰かの心を突き動かし、子どもたちの遊びの環境作りに結びついたならこれ以上の喜びはありません。絵本にはそんな力があると信じています。

(おかの・ともこ)●本書が初めての訳書。

「道はみんなのもの」
さ・え・ら書房
『道はみんなのもの』
クルーサ・文
モニカ・ドペルト・絵
岡野富茂子   
岡野 恭介・共訳
本体1,500円