日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『ごぞんじ!かいけつしろずきん』 もとしたいづみ

(月刊「こどもの本」2013年4月号より)
もとしたいづみさん

時代活劇の魅力

『ごぞんじ! かいけつ しろずきん』は漢字変換すると『御存知! 怪傑白頭巾』。表紙を開けば、時代劇の始まり始まりー。

「時は江戸時代。人けのない街角に、突然子どもの泣き声が響きました。」(歯切れ良い渋いナレーション)

「わ〜〜〜〜〜〜ん!」(子役の声)

「恐ろしい化け物の影が二つ……。」と、やや勿体つけて。SE(ジャジャジャーン!)と同時に、画面いっぱいのタイトル「御存知! 怪傑白頭巾」テーマ曲スタート。チャンチャーラスチャラカチャラチャ…。映像は江戸の街並みから裏長屋で遊ぶ子どもたちへ。曲、終了。バタバタと草履の音。

「てぇへんだ、てぇへんだー!」
*「 」以外は私のイメージです。

 にしても、よくこんな好き放題に書かせてもらえたよなあと思う。時代劇や落語に馴染みのない子どもたちが、果たしてこの世界観をわかってくれるのだろうか? と「待った!」がかかるのが常。

 しかし嬉しいかな、意外や好評だったのだ。と、新刊でありながら自信満々なのは、実はこれ、月刊絵本として二〇〇七年に出ており、しかもオールリクエスト版として昨年再販されたと思ったら、すぐに市販化というラッキーな絵本だから。

 ネットで検索すると、保育園の年中さんの劇として上演されたとか(白頭巾の他に、青頭巾、黄色頭巾、桃頭巾も登場!)、この絵本を読んだ子どもたちの間で、江戸言葉が大流行しているなんて記事も見かけた。かわいいだろうなあ。「てぇへんだ、てぇへんだ!」と駆け回る子どもたち。

 江戸のべらんめえ調や歯切れのいい七五調は、私達日本人のDNAに刻み込まれているのか、すっと馴染んで心地良い。私も時代物の映画を見るようになったのは最近なのだが、何故かほっとするから不思議である。

 そして絵の竹内通雅さんも、意外や時代物はこの絵本が初めて。ダイナミックで美しくユーモラスなツーガワールドが、魅惑の江戸時代にあなたを誘ってくれるはずである。

もとした いづみ●既刊に『おっとどっこいしゃもじろう』『がっこういこうぜ!』『ふってきました』など。

「ごぞんじ!かいけつしろずきん」
ひかりのくに
『ごぞんじ!かいけつしろずきん』
もとしたいづみ・作
竹内通雅・絵
本体1,280円