日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『とんとんパンやさん』 白土あつこ

(月刊「こどもの本」2013年4月号より)
白土あつこさん

「パン、焼きあがりました!」

 パンが焼ける匂いって、なんであんなに美味しそうなんでしょう。あの匂いにさそわれて、気がつけばお店の中。トレーとトングを握りしめ、どれにしようかと迷っていた…なんてことが、今まで何度あったことか。

 とくに、「焼きたて」なんてプレートを目にしたら、もう見過ごすことはできません。

 そんな、パン大好きな私は、いつかパンがテーマのお話を書いてみたいと思っていました。

 今回、編集者さんから「しかけ絵本を作りませんか?」と声をかけていただいて、その夢が実現しました。

『とんとんパンやさん』は、開店前から行列ができるような、人気のパン屋さんのお話です。

「とんとん」とドアをたたいてお客さんがやってくるたびに、パンがひとつ焼きあがる、という穴あきのしかけ絵本になっています。

 最初、しかけの形はなにがいいかと考えたとき、まるっこい穴がいいな、と思いました。そのまるっこい穴から美味しそうなものが見えたらいいな…といったらパンしかない。穴のむこうから美味しそうな焼きたてパンが、つぎつぎ出てくるとたのしいな、と。

 美味しそうなパンをたくさん描きたくて、たくさん穴をあけました。

 まるっこい穴に合わせるために、パン屋さんのご主人のぶーさんも、パンを買いにやってくる動物たちも、みんなふくふくまるっこい顔になりました。

 後に、たくさんの穴とパンの位置合わせに、四苦八苦することになってしまったのですが…。

 それでもなんとか、しかけ初心者の私をサポートしてくださったみなさんのおかげで、めでたく『とんとんパンやさん』を開店することができました!

 ページをめくれば、いつでもそこには焼きたてパン。つぎつぎ焼きあがる美味しいパン。さあさあ、たっぷり召し上がれ!

(しらと・あつこ)●既刊に「たっくんとたぬき」シリーズ、『はらぺこブブのおべんとう』『一円大王さま』(作/すとうあさえ)など。

「とんとんパンやさん」
ひさかたチャイルド
『とんとんパンやさん』
白土あつこ・作・絵
本体1,200円