日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私がつくった本42
PHP研究所 山口 毅

(月刊「こどもの本」2013年2月号より)
物語の迷路 アンデルセンから宮沢賢治の世界まで

『物語の迷路 アンデルセンから宮沢賢治の世界まで』
香川元太郎/作・絵
2012年11月刊行

 累計二百万部を超える「香川元太郎の迷路絵本」シリーズは、最新作の本書が第九弾となります。私がこのシリーズを担当するのは、『宇宙の迷路』(二〇一一年七月刊)に続いて二冊目です。

 じつは、『宇宙の迷路』発刊直後、次の作品のテーマはまだはっきりとは決まっていませんでした。香川先生と検討の結果、お話関連の迷路絵本をやってみようということになりました。その後、方向性を探る中で、「ガリバー旅行記」などの名作物語を題材にしたものが最もインパクトがありそうだということになり、『物語の迷路』に決まりました。

 今回の絵本の中心となる十一場面は、「アンデルセンの世界」「海底二万里」「宝島」「不思議の国のアリス」「三国志」「宇宙戦争」「オズの魔法使い」「走れメロス」「ガリバー旅行記」「銀河鉄道の夜」「ピーター・パン」。どの場面も、原作のイメージをできる限り忠実に再現してあり、原作のストーリー展開に沿って迷路がつくられていたり、原作に登場する人や物がきちんと描かれていたりします。

 迷路絵本には、迷路のほか、かくし絵、クイズなどがありますが、遊びの要素だけでなく、こうした学習要素がある、「事実」に依拠しているという点が、普通のエンターテイメント絵本とは違うところです。

 また、十一場面を構成する作品以外にも、同じ作者の別の作品や、近いテーマの作品などから題材をとって、かくし絵にしたり、登場人物をまぎれこませたりしてあります。それらを含めると、取り上げている作品の数は六十以上にのぼります。

 今回、迷路絵本の制作にあたって、香川先生は原作(翻訳書)を改めて読み返したとおっしゃっていましたが、六十以上の作品を踏まえながらの迷路づくりやかくし絵づくりは、まさに名人芸です。子どもの頃から名作に親しまれ、かつ、子育ての際など事あるごとに名作に触れてこられたからこそ成せる業だと、感服しました。

 ただし、原作に忠実であるがゆえに、ヒヤリとした瞬間もありました。「オズの魔法使い」の場面で、原画の中にある二つの名称がなぜか逆になっていることがわかったのです。これについては、すぐに原画の中の文字を修正していただき、、事なきを得ました。

 さて、迷路絵本発刊のあとは、恒例の迷路イベントです。迷路絵本の中の絵を拡大した大型パネルを使うなどして、子どもたちに迷路やかくし絵さがしに挑戦してもらいます。現在、香川先生と弊社スタッフが全国各地を行脚しています。

「香川元太郎の迷路絵本」シリーズは、弊社の看板シリーズの一つ。これからも、多くの子どもたちに喜んでもらえる、息の長いシリーズに成長させていきたいものです。