日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『おまけ鳥』 飯田朋子

(月刊「こどもの本」2013年2月号より)
飯田朋子さん

来る来る亭にようこそ!

 僕、『おまけ鳥』の中に出てくるラーメン屋(来る来る亭)の息子、翔です。

「新作について書かなきゃならないんだけど、書けなくて」と作者の飯田さんが訴えてきたのは三日前でした。

「なんで? 自分の作品でしょ」

「だから書けないのよ。だって物語の中で書きたいこと書いちゃったんだもの。締切もうすぐなの。翔君、助けて」

「『おまけ鳥』もその前の『だんご鳥』の中でも、語りをやったのは僕だよ」

「でも、それ、思いついたの、わたしでしょ。だから、お願い」とわけのわからないことを言って、あげくに拝まれてしまいました。そう言われると断れない気の小さい僕です。

「店は猪突猛進の母、優柔不断の父、そしてちょっと他の人と違う姉・梓の三人で切り盛りしている。芳君という少年を迎えて、餃子講習会を開くことになった。講師は父さん」と、いい調子で始めたのに、

「そうそう、父さんたら講師になったとたん、やけに生き生きして。人はその人の持っている力が発揮出来たり、存在を認められるだけで、こんなにも輝くんだって改めて思っちゃった。障害があってもなくても誰だってそうよね。これ書きたかったことなの。それで店内を見回すと、ムム、梓ちゃんが何かを作っている。芳君と一緒に。このあとは翔君が話して」

 突然飯田さんが割りこんできて、興奮してしゃべりだしました。

「全部話してしまわない方がいいと思うけど……」

 あとは続けて、なんていったくせに、僕の意見などムシ、

「途中翔君が恋をしたり失恋したり、物語を進めていくの大変だったんだから」と、まったく口が減らない。

「思春期だもの、しょうがないじゃん」

とぶつぶつ言っていると、

「今、『おまけ鳥』の続編を書いてるんだから、翔君少し静かにしててくれる」

 飯田さんはいつの間にかパソコンの前に座り、「大丈夫、翔君の恋もなんとか成就できるように頑張るから」

 なんて勝手なことを言っています。

(いいだ・ともこ)●既刊に『だんご鳥』『シャトルバスにのって』。

「おまけ鳥」
新日本出版社
『おまけ鳥』
飯田朋子・作
長野ともこ・絵
本体1,500円