こどもの本

私がつくった本41
評論社 竹下純子

(月刊「こどもの本」2013年1月号より)
ジョシュア・ファイル(全10巻)

『ジョシュア・ファイル』(全10巻)
マリア・G・ハリス/作、石随じゅん/訳
2010年9月~2012年11月

 二〇一二年十二月二十二日(二十一日または二十三日とも)に地球は滅亡するという説が、非常にマニアックな一部の人々の間でささやかれているのをご存知でしょうか。近年の気候の変動や災害の多発とあいまって、マヤの長期暦がその日で終わっているのが、根拠とされています。マヤの暦についてはNHKテレビでも取り上げられていました。

 マヤ文明は、中米の熱帯雨林地帯で紀元四世紀ごろ生まれました。現在の中米五カ国を含んだ、広大な地域で長い間栄え続けましたが、十六世紀に始まるスペイン侵攻の結果、十七世紀に滅んでいます。

 マヤ文明の建造物や石碑などの遺跡は発見されたものの、研究はなかなかはかどりませんでした。二十世紀に入って、マヤ文字の解読が進むにつれ、その驚くべき高度な文明が明らかになってきました。天文学と数学、それに裏打ちされた暦の発達です。

 しかし惜しむらくは、マヤ文明の謎を解く鍵ともなったであろうマヤの叡智をしるした写本(コデックス)が、スペインの侵略時に徹底的に破壊されてしまったことです。奇跡的に破壊を免れ、現在に伝えられているのは、ほんの数点しかありません。

 本シリーズは、そのマヤの写本であるコデックスと、地球に迫り来る大惨事をめぐる冒険物語です。オックスフォードに住むイギリスの少年ジョシュは、事故死したとされる父が残したマヤの文書の謎を追って、メキシコにわたります。そこで、マヤの末裔の住む地底都市に導かれ、地球文明の崩壊の危機(二〇一二年十二月二十二日超電磁波の襲来によってコンピューターシステムが破壊される)が事実であること、数ある写本のうちでも、イシュ・コデックスには大惨事を食い止める方法が書かれていること、そして、失われたイシュ・コデックスを探し、それを守るのが、他ならぬジョシュの家系の宿命であることを知らされます。父亡き今、イシュ・コデックスの探索はジョシュ自身の使命となりました。物語は世界各地を舞台に、過去、現在、未来と行き交い、果てはパラレルワールドにも展開していきます。

 作者のハリスさんは、精緻極まりない構成の本作品が第一作! 作中からも窺い知ることができる音楽や映画に関する知識の豊富さや、実在の研究者や作家に対しての造詣の深さからしても、まれに見るスケールの作家のデヴューといえるでしょう。

 七、八、九、十巻は直前に出版しようなどという勝手な目論見で、翻訳の石随先生には大変なご苦労をおかけしました。登場人物の的確なイラストを描いてくださったサイトウさん、素晴らしい装丁をしてくださった水野さんにも感謝です。また、内輪話となりますが、私の前任者の趣味のせいで、原作にはない地図や暗号にも苦労させられました。でも、おかげで魅力的な作品に仕上がりました。感謝!