日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『食べもの日本地図鑑』 小泉武夫

(月刊「こどもの本」2012年10月号より)
小泉武夫さん

地図と図鑑が合体!

 いま日本にとって喫緊の課題は食料自給率の向上だ。食べものの6割を外国に依存(カロリー換算)しているにもかかわらず、その危機感が国民全体に不足している現状は放っておけない。その意味で、日本のこれからを担う子どもたちにとって、本書の刊行はまさに時宜を得たものと言える。

 2部構成の第1部からは、主な農・水・畜産物の全国収穫ランキングを通して、日本の国土の豊かさと底力が理解できるだろう。同時に栄養のひみつや流通の仕組みを説いた図鑑頁を見ながら、食の文化を総合学習できるよう工夫されている。

 第2部は、収穫データを47都道府県別に展開、子どもたちそれぞれの〝地元〟のすがたが学べるものにした。「食べもののお国自慢」には子どもたちの関心が高いからだ。学校給食に地元産の食材が全国一多く供給されている高知県南国市は「あなたの町は好きですか?」との子どもたちへの問いに「好きです」という回答が全国一高率だ。いかに地元の農産物に子どもたちが関心を寄せているかの表れである。

 また第2部には郷土ならではの食材や伝統料理などを囲みで取り上げ、興味深い話が盛り込まれている。例えば、ため池の話(56頁)に注目してほしい。兵庫県にはため池が4万以上もあって日本一であることを紹介して、ため池地帯を空撮した写真を見せている。

 米を炊いて水分が4割を占めるご飯を食べるとは水を食べているとも言えるのだから、日本は「水の国」であること、水を大切にしなければならないことをここから学んでもらいたいものである。

 本書全体からは、日本が安全・安心な農産物や水産物、畜産物づくりに苦労しながらもがんばっている国であることを学べる。 

 食べものの育ち方や取れ方は地形や気候との関係が深い。それだけに、本書を旅行のお供にして、その行き先々で食べものと土地柄との関係を自分の目で確かめてみるのも、本書を活かす方法のひとつだ。(談)

(こいずみ・たけお)●既刊に『小泉武夫のほんとうに美味い話』『親子で学ぼう! おいしさの秘密がわかる本』など。

「食べもの日本地図鑑」
平凡社
『食べもの日本地図鑑』
小泉武夫・監修
佐藤竹右衛門・イラスト
平凡社編集部・編
本体1,900円