こどもの本

私がつくった本37
新日本出版社 柿沼秀明

(月刊「こどもの本」2012年9月号より)
よっつめの約束

ビジュアルブック
『語り伝えるアジア・太平洋戦争(全5巻)』
吉田 裕/文・監修
2011年12月〜2012年3月

 小社には、二〇一〇年に、おとな向けに刊行した『日本近現代史を読む』という本があります。明治維新からの日本の歩み、日本の侵略と植民地支配の真実を、日本の支配層と人びととのせめぎあいの中でとらえたテキストです。反響も大きく、刷も重ねました。この本を、今、学校で歴史を学ぶ、小・中学生にも届けようと企画したのが、発端でした。

 先の本の著者の一人、吉田裕一橋大学教授に執筆を引き受けていただき、スタートしたのが二〇一〇年の春です。先生のスケジュールのご都合もあり、実際の執筆は一年先の二〇一一年となりました。

 その一年の間、構想、構成などを先生と打ち合わせ、子どもたちの目線から戦争を考えてもらえるよう、漫画や紙芝居、動物、少年兵、国民学校、集団疎開、戦災孤児などの話題を各巻に必ず入れることにしました。また、わたしは、東京大空襲・戦災資料センターの方々と『ビジュアルブック 語り伝える東京大空襲』を編集・刊行していました。

 そして二〇一一年春先、社会的にはあの大震災、その一週間後に、わたし個人に右足首の骨折が発生……。医者いわく「治りにくい体質」で、当初骨がくっつくまで二週間といわれた治療が、二ヶ月、四ヶ月とのび、さまざまな業務に支障をきたしつつ日が過ぎて……(安斎育郎先生と『原発・放射能教室』の企画も立ち上げてましたけどね)。夏の終わりから具体的な編集作業に取り掛かりました。

 より子どもたちにわかりやすくということで、文章を見直していただいたり(用語解説を吉田先生が用意してくれました)、内容を表現するイラストを漫画家の安土じょうさんに描いていただいたりしました。また調べ学習に使う本に必須の、索引にも一工夫。ひとつの用語から理解する手助けとして「関連」という項目をつけました。

 刊行後、著者の吉田先生は「今回の本で一番考えたのは、戦争を直接体験した世代がいなくなる時代がすぐそこまで来ている(中略)そうした時代の平和教育を考えた時(略)自分が体験していない戦争に対する想像力をどうやって育んでいくのかという問題を一番意識しました」と話しています(『しんぶん赤旗』二〇一二年五月二七日付)。そして「想像力を喚起するために、戦争の悲惨さを数字だけで理解するのではなく、どのようにして人々が死んでいったのかということをできるだけ書きこみました」(同記事)と述べています。

 また「もう一つは、戦争責任という考え方を、子どもが理解するのは難しいと思いますが、その輪郭ぐらいは、理解してもらいたいと思いながら書きました」(同記事)とも述べています。そのお手伝いができたなら、そして子どもたちが手にとって想像力を働かせてくれるものになったなら幸いです。