日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『チマのはじめてのぼうけん』 藤嶋えみこ

(月刊「こどもの本」2021年12月号より)
藤嶋えみこさん

守り守られる やさしい世界

「みんな守り守られる、そんな優しい世界を描きたい。」

 この絵本を作る際に最初に思ったことです。

 アリス館の担当編集者さんとの出会いは10年ほど前のこと。当時絵本作家を目指して上京し、ご縁があって一緒に絵本を作ることになりました。

 生まれ育った秋田の豊かな自然を舞台にしました。そこからじっくりゆっくり、何度もやり直し、長い年月を経て、ようやく生まれた愛情たっぷりの絵本です。

 主人公のチマは、森の神様が宿る木を、代々護り続ける一家の子ども。

 私の描きたいと思っている「優しい世界」の輪郭には、神様や見えない世界の存在があります。

 秋田の地方では、自宅に社や神棚がある家が多く、毎朝炊きたてのご飯と新鮮なお水をお供えします。

 昔から今も続く当たり前の光景ですが、大人になってから、意外に珍しいことだと知りました(地域によるのでしょうね)。

 もしかしたら、神様を守る営みそのものに、ずっと守られていたのかもしれないと感じています。その壮大な愛情みたいなものが、この物語の世界観の土台になっています。

 子どもの頃から、庭にある大きな栗の木に宿る鳥たちを眺めながら、たくさんの物語を想像してきました。白い小さな生き物が木に住みついて、お茶をしたりお散歩したり眠ったり。それがチマの原点です。

 主人公のチマは、怖がりだけど、気分が良いと歌いだしたりして、どこか能天気。川に流されて困っている子を思わず助けてしまう優しい子でもあります。はじめてできた仲間たちと、力を合わせ困難を乗り越えていきます。

ハラハラドキドキ!?の展開で、ワクワク楽しい、ほっこり優しい絵本に仕上がりました。

 かわいいチマたちと、彼らの暮らす「キアタの森」の美しい自然を冒険していただけたら嬉しいです。

 お歌を歌いながら、ご一緒に♪

(ふじしま・えみこ)●既刊(絵)に『おおきいおうちとちいさいおうち』「バーバー・ルーナのお客さま」シリーズ。

『チマのはじめてのぼうけん』
アリス館
『チマのはじめてのぼうけん』
藤嶋えみこ・作
定価1,430円(税込)