日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『身近で観察するコウモリの世界』 大沢夕志・大沢啓子

(月刊「こどもの本」2012年8月号より)
大沢夕志、大沢啓子さん

コウモリの魅力

 初めてオオコウモリに出会ったのは1988年の暮れ、沖縄の南大東島でした。目の前のオオコウモリは、大きな目とふわふわとした毛皮がかわいらしく、とても魅力的な野生動物でした。私たちとコウモリのつきあいはそこから始まります。

 当時、研究している人がほとんどいないことも、生き物好きの私たちの探求心を刺激し、休みごとに南西諸島や小笠原までオオコウモリを見に通うようになりました。そして、数年後には海外にも足を延ばすようになり、オーストラリアでは一万頭ものオオコウモリが夕暮れに飛びたつ姿や、アメリカンサモアでは昼間青空を飛ぶ姿を見ました。

 研究者とのつきあいもできて、さまざまなコウモリ調査に手伝いで参加する機会も増え、オオコウモリだけではなく、コウモリ全般に対象は広がっていきます。

 でも、中米にいる真っ白なコウモリや、アフリカにいる不思議な顔をしたウマヅラコウモリを見に行くには、サラリーマン生活を続けていては無理です。こうなったら、コウモリの魅力を伝える宣伝係になろう。二人とも22年間続けた仕事を辞め、コウモリに専念することにしました。 

 コウモリは、日本だけでも35種類、世界中には1200種以上いる実に多様な生き物です。私たちのごくごく身近に、家の屋根裏にちゃっかりすんでいるものもいます。洞窟にすむものもいれば、木にぶら下がって暮らすもの、自分で植物を囓ってテントのようにするものもいます。果物を食べるものもいれば、花の蜜を舐めるもの、虫を食べるもの、別のコウモリを食べるものまでいます。世界中、熱帯雨林からシベリアの森まで様々な環境で生活しています。

 とかく誤解されて嫌われたり怖がられたりすることの多いコウモリ。本当の姿を知ってもらえれば、きっとイメージも変わる、そんな願いを込めてこの本を作りました。

(おおさわ・ゆうし、おおさわ・けいこ)●既刊に『コウモリ観察ブック』(共著)、『ふたりのロタ島動物記』『オオコウモリの飛ぶ島』など。

身近で観察するコウモリの世界
誠文堂新光社
子供の科学★サイエンスブックス
『身近で観察するコウモリの世界』
大沢夕志、大沢啓子・著
本体2,200円