日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『びりびり』 中新井純子

(月刊「こどもの本」2021年8月号より)
中新井純子さん

び、び、びび、び、

 びりびり、と紙が破れて、ぱっ、と形が変わるというイメージが浮かんだのは、赤ちゃん絵本を、と考えだしてからすぐのことでした。

 びりびり、ぱ! びりびり、ぱ!

 いくつかのパターンが思い浮かんだ中、自分ではいいなと思っても赤ちゃんにはわかりにくいものなど、編集者のかたからもアドバイスをいただいて、赤ちゃん絵本のむずかしさと面白さを実感しながらつくっていきました。

 そしていざ、絵を描きはじめた時…、各ページに合うようにクレヨンで色を塗って用意した紙が、「びりびり」と破くにはしっかりしすぎていて、「び、び、びび、び、」とムリヤリ破いたような形なることに気がつきました。見た目にはあまり変わらないのかもしれないけれど、自分ではなんとなくしっくりこなくて不安になりました。

 それからしばらくは、厚すぎなく薄すぎなく、ちょうど気持ちよく破れそうな紙をいろいろ探しては、ひとりでびり、びり、とためし続けました。ハタからみたら少しふしぎな姿だったにちがいありません。 

 おかげで紙破きを堪能し、子どもたちがうれしそうに紙をびりびりびりーー! とする時の気持ちもよくわかりました。  

 こどもアトリエのスタッフを務めはじめてしばらく経ちます。明るくまっすぐな子どもたちのエネルギーに圧倒された帰り道、今日はみんな楽しかったのかな? と思い返します。

 でも、子どもたちが楽しく過ごしてうきうきした気持ちがいっぱいの帰り際は、かけ声とともに私とぱちん! と手をあわせてくれることがあり、そんな日は私もほくほく元気になります。それが、ラストのアイデアにもつながることとなりました。  

 ばたばたしていた自分自身の子育ても思い出したりしながら、ようやくできた絵本です。赤ちゃんとお母さんに一緒に楽しんで読んでもらえたら、そして、小さなスキンシップも生まれたりしたら、とてもうれしいです!

 たーーーーーっち!

(なかあらい・じゅんこ)●既刊に『ものすごくおおきなプリンのうえで』(二宮由紀子/文)、『しろしろのさんぽ』など。

『びりびり』"
童心社
『びりびり』
中新井純子・作
定価1,100円(税込)