こどもの本

私の新刊
『わたしのともだち ポルポちゃん』 もとしたいづみ

(月刊「こどもの本」2021年7月号より)
もとしたいづみさん

かわいすぎてタコの口になる

 赤や黄色や青のカラフルなタイルの水槽に、頭にリボンをつけたタコの「ポルポちゃん」がひそんでいる。ページをめくれば、女の子の表情にもワンピースにも、そしてきれいな光景にも、乙女心をガシガシわしづかみされる。

 こう言っちゃなんだが、私は三十年も前から「ジェンダー」には人一倍ピリピリしてきた。でも、この絵を初めて見たとき、「きゃ~ん。かわい~♥女の子の絵本って感じー」と黄色い声(←想像では)を発してタコの口になった。想定外の可愛さに還暦のおばさん、ノックダウンである。

 ネタバレになるので詳しくは書けないが、中身は「女の子の夢がいっぱい詰まったキラキラしたお話」ではない。むしろ「ファイト! 一発!」的な話と言えるかもしれない。

 すでに読んだ方からは「友達っていいよね、と思わせてくれる」などとお褒めの言葉をいただき、もじもじしている。

 そもそも何故タコなのか、といえば、北見さんの「蛸を飼う」という絵を見たからだ。閑散とした道の隅っこで、おかっぱの女の子がリアルなタコをでろんと持ち上げている渋い色合いの作品で、これから事件が起こりそうな不穏な気配が漂っていた。

 北見葉胡さんの個展の芳名帳に「是非絵本をご一緒したい」とラブレターを書き込んだのは、十五年以上も前のことだったと思う。それを見た編集者が声をかけてくれて、絵本の打ち合わせが実現した。

 家族構成を聞けば、北見さんもわたしも、姉妹の母であり、お互い姉妹の姉でもある。姉妹あるあるをちりばめた爆笑絵本にしましょう! 猫も登場させてね! となってから幾年月。

 私がこれだ! というテキストが書けずにもがいているうちに、担当者も異動により三人目となり、テキスト書いては打ち合わせ、を繰り返した挙句「タコだ!」と閃いたというわけだ。

 長年の夢が叶い、こんなキュートな絵本になるとは感無量だ。でも、そういえば姉妹も猫も登場していない。すみません。北見さん。次回は是非!

(もとした・いづみ)●既刊に『まってました』(石井聖岳/絵)、『狂言えほん かきやまぶし』(田中六大/絵)など。

『わたしのともだち
講談社
『わたしのともだち ポルポちゃん』
もとしたいづみ・文/北見葉胡・絵
定価1,485円(税込)