日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『バレエはじめるの』 つがねちかこ

(月刊「こどもの本」2021年2月号より)
つがねちかこさん

初めてのドキドキとワクワクを

 私の娘はどでんと座ったまま動かない、まんまるな赤ちゃんでした。このままではお尻に根っこが生えてしまうんじゃないかと危惧した私は、親子で一緒に体を動かして楽しむ、体操教室に通うことにしました。

 2、3歳のクラスでしたから、それはそれは賑やか。物おじせずなんでもやる子、ママから離れない子、この世の終わりかと思うくらい泣き叫ぶ子。一人娘を育てていた私は、こんなにも一人一人の個性は違うものなのかと、新鮮な驚きがありました。それからは、みんなのコロコロ変わる表情を見るのが楽しくて、よく観察をしていました。

 体操教室に慣れてきた頃、バレエも習い始めました。こちらは、親子でやるのではなく、こどもだけです。ちゃんとご挨拶をして、親から離れて、先生のお話をちゃんと聞かなくてはなりません。3、4歳のクラスでしたが、ちょっとした緊張感がありました。

 こどもたちはかわいいレオタードを着て、一生懸命頑張っています。この頃のこどもの一生懸命な姿は何とも言えない、愛らしさに溢れていました。娘もしかめっつらで、頑張っていました。少しは笑ったらいいのに……と思っていると、先輩のお友達が話しかけてくれて、途端にぱあっと笑顔になりました。

 バレエの先生や、お姉さんたちは、とても綺麗で、ちびっ子ちびリーナちゃんたちの憧れでもあるようです。きらきらした瞳で、お姉さんたちをみつめる横顔を見ていると、親の手を離れ、小さな心で感じたドキドキやワクワクが、この子たちを形作っていくんだなあと、妙に感動したことを、覚えています。

 お迎えのたびに、そんなみんなの姿を見ていて、「ああ、絵本に描きたいなあ」と思うようになりました。そして、出来た絵本が『バレエはじめるの』です。初めてのドキドキやワクワクを、お届け出来たら、うれしいです。

(つがねちかこ)●既刊に『おおきくなったの』(すとうあさえ/文)、『ななちゃんのおかたづけ』『ななちゃんのおきがえ』など。

『バレエはじめるの』"
ほるぷ出版
『バレエはじめるの』
つがねちかこ・さく
本体1,400円