日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『大日本図書の生活科えほん 食育編』 平田昌広/平田 景

(月刊「こどもの本」2012年7月号より)
平田昌広、平田景さん

みんな監督!

 すぐれた映画やドラマのシナリオは、読みものとしても楽しめます。

 では、絵本のテキストをシナリオのようにしたら?

 そう考えてはじめたのが会話形式の絵本で、何冊か既刊をへて、この「生活科えほん」シリーズは、きっかけとなったシナリオのもつ魅力に、もっとも近づけたと思っています。

 シナリオでは、セリフのあたまに役名がつきます。この絵本では、セリフのあたまに登場人物の顔アイコンがついています。

 映画やドラマのナレーションは、絵本では状況説明のテキストにかわり、シークエンスの設定を伝えるシナリオのト書きは、絵本の絵になりました。

「じゃあ、監督は?」

 監督は……作家である私たちではありません。

 この絵本を演出するのは、読み手のみなさん。監督は、子どもたちのまえで絵本を読むみなさん自身です。

「生活科」は、小学1、2年生の教科です。幼稚園・保育園から、小学校にあがった子どもたちは、それまで以上に、集団のなかで自己主張しなければならないかもしれません。

 でも、自己主張するまえに、「あいてのことばを聞いてほしい」と、個人的に強く思います。

 絵本の読み聞かせをとおして、子どもたちの聞く力を育てられたら、読み手という監督のみなさんの手助けができたら、作家として、とてもうれしいです。

 読み手をとおして、目と耳でかんじた本に興味をもった子どもは、自ら本を手にして、読みはじめるはずです。

「読み聞かせ」から「ひとり読み」に移行しても、映画やドラマのシナリオが読みものとして楽しめるように、この絵本もきっと楽しんで読んでもらえると信じています。

 そのとき、子どもたちは、おとなにはない想像力で物語を演出し、監督になりきっているはずです。

 そんな光景を思いうかべて、私たちは、きょうも絵本をつくっています。

(ひらた・まさひろ、ひらた・けい)●既刊の会話絵本に『おかん』『ねえ、ほんとにたすけてくれる?』『かいてんずしだいさくせん』など。

「大日本図書の生活科えほん」食育編(全3巻)
大日本図書
「大日本図書の生活科えほん」食育編(全3巻)
平田昌広・ぶん
平田 景・え
本体各1,500円