こどもの本

私の新刊
『神様のパッチワーク』 山本悦子

(月刊「こどもの本」2020年10月号より)
山本悦子さん

幸せな家族の物語

『神様のパッチワーク』は、赤ちゃんの時に特別養子縁組をした結(むすぶ)と、その家族の物語です。

 わたしが、はじめて特別養子縁組という言葉を耳にしたのは、たまたま見たテレビの情報番組です。予期せぬ妊娠をした中学生の女の子が、特別養子縁組をサポートするNPO法人の保護シェルターで出産の日を待っていました。養子に出すことは決めていますが、心は揺れています。

 一方、赤ちゃんをむかえることになった夫婦は、期待と不安で胸をいっぱいにしています。赤ちゃんをはじめて抱いたときに、お母さんは言います。「やっと会えたね」夫婦にとって、この子はよその赤ちゃんではなく、ずっとずっと待ち焦がれていたわが子なのです。半年の試験養育期間を経て、夫婦の実子になるとのことでした。

 実のお母さんが命をかけて生んだ赤ちゃんを、大切に育ててくれる別のお母さんに託す。わたしには、それは命のバトンリレーに見えました。

 海外では、かなりオープンで一般的になっている養子縁組ですが、日本では、どちらかといえばタブー視されています。養子をむかえるというだけで「気の毒だ」「かわいそうだ」と言われてしまいます。けれど、養子縁組は、子どもを幸せにするための制度で、養子をむかえた家族は、特別な家族ではなく、どこにでもいる普通の家族です。

 この物語の主人公・結は、転校生のあかねに「不幸な生い立ち」と言われます。もしかしたら今まで気づかなかったけれど、自分はかわいそうなのかと不安になりますが、すぐにそんなことはないと気づきます。結は、知っているのです。自分はお父ちゃんとお母ちゃんが世界で一番好きで、自分のことを世界で一番好きなのもお父ちゃんとお母ちゃんだということを。自分たちは、好きなもの同士の幸せな家族だとわかっているのです。

 この物語は、愛情でつながった普通の家族の物語です。こういう家族の形があることを、子どもたちに知ってもらえたらいいなと思います。

(やまもと・えつこ)●既刊に『神隠しの教室』『先生、しゅくだいわすれました』『今、空に翼広げて』など。

『神様のパッチワーク』"
ポプラ社
『神様のパッチワーク』
山本悦子・作/佐藤真紀子・絵
本体1,300円