日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『ミーちゃんとロン』 阿部 肇

(月刊「こどもの本」2020年6月号より)
阿部 肇さん

やさしい気持ちになれました

 まず最初に、写真を見て(あれっ?)と思われた方がいらっしゃると思います。この写真は、今回の絵本のモデルになった女の子が、ママのスマホで、いたずらアプリを使って撮ってくれた写真です。僕は大の写真嫌いで、手元には一枚も写真がありません。この写真は、今回のモデルが撮ってくれたので、僕のスマホに保存しておいたものです。

 写真を載せるなんて聞いていなかったので、気軽に引き受けたのですが、送られて来た見本の冊子を見て(えっ!)と思いましたが、この写真なら、この本の紹介にピッタリかなと思い、やむなく使用しました。

 絵本のモデルは、僕の(社会通念上の続柄つづきがら)孫になります。そうなると、僕はおじいちゃんということになり、とてもテンションが下がりますが。

 今回は、その子のおもちゃを直してあげたことがきっかけで「おもちゃのおいしゃさん」というタイトルで、かきはじめました。でも、かいていくうちに、どんどん子供の無邪気さ、純粋さ、無条件の可愛らしさ(※孫だからではなく)にふれ、とても楽しく仕事ができました。

 ただ、今までの僕の仕事のスタイルとは違っていましたので、少しとまどいがありました。僕は、絵本作家になるきっかけが『おおきな木』という絵本だったので、今まではメッセージ性の強い本を多くかいてきました。

 本は、僕のものではなく、読者のものなので、こんなことは考えなくてもいいのですが、僕の中で、今回の本がどういう立ち位置にいるのか、正直分からないでいます。今までは、メッセージを伝えたいとか、いい絵をみせたいなど、求めるものがあったのですが、この本は、僕の頭の中にはっきりとしたものがありません。

 ただ、この絵本を見ていると自分自身でも、やさしくなれるような気がします。今は、漠然と、こんな感じでいいのかなー、と思っていますが。

 読者が、どんなふうに見てくれるのか楽しみです。

(あべ・はじめ)●既刊に『クリスマスのよるに』『わるいわるい王さまとふしぎの木』『いっしょがいいよね』など。

『ミーちゃんとロン』"
BL出版
『ミーちゃんとロン』
あべはじめ・作
本体1,300円