こどもの本

私の新刊
『夜ふけに読みたい 奇妙なイギリスのおとぎ話』 和爾桃子

(月刊「こどもの本」2020年2月号より)
和爾桃子さん

愛すべき英国民話の男の子

 おかげさまでイギリスのおとぎ話も二巻になりました。今回もフローラ・アニー・スティール編のEnglish Fairy Talesから選りすぐったお話ばかりです。

『夜ふけに読みたい 不思議なイギリスのおとぎ話』と銘打った一巻はイギリスの女の子たちがメインでしたが、二巻は守護聖人から庶民までイギリスの男の子たちを幅広くそろえました。高潔な騎士、母親にガミガミ言われる若者とそれぞれに個性的ながら、大きく二つに分かれるようです。ひとつを英雄系とすれば、もうひとつはさしずめヘタレ系でしょうか。

 英雄系は説明不要でしょう。どの国のお話にも出てくる憧れのヒーロー、自力で人生を切り開く「できる」タイプですが、イギリスらしいのはむしろヘタレ系です。たいていは容姿だけ、あるいは運の良さだけで、なんとなくうまくいってしまう。自分にはなんの能もないのに、なぜか周囲に助けられて幸運をつかみます。

 まあ早い話が、実人生なら「なんであいつばっかり」と言いたくなるようなラッキーボーイたちが、とても肯定的に描かれているのです。ひとの幸運をやっかむような表現はせず、大らかなユーモアにくるんでしまう。努力は大事だけど英雄系ばかりが人生じゃないよ、もっと楽しく生きていいんだよと子供のうちから語り聞かされれば、その後の人生もかなり違ってくる気がしませんか。

 ヘタレ系はじめ、イギリスらしい現実主義に裏打ちされたお話のかずかずは、お子さんから大人まで年齢を問わずお楽しみいただけます。ぜひ一度は声に出して読んでみてください。発声することによって脳の発達、ストレス軽減など、心身に多大な効果が見込めるそうです。

(わに・ももこ)●既訳書に『夜ふけに読みたい 不思議なイギリスのおとぎ話』(共訳)、サキ『クローヴィス物語』など。

『夜ふけに読みたい
平凡社
『夜ふけに読みたい 奇妙なイギリスのおとぎ話』
吉澤康子+和爾桃子・編訳/アーサー・ラッカム・挿絵
本体1,900円