こどもの本

私の新刊
『ふるさと60年 戦後の日本とわたしたちの歩み』 道浦母都子

(月刊「こどもの本」2012年6月号より)
道浦母都子さん

三世代をつなぐ絵本

 時間は目には見えません。

 けれど、ほんの少しのことで、たくさんの時間と出会い、体験することができます。

『ふるさと60年』は、そんな魔法のトンネルを多く秘めている絵本です。

「昔の子どもたち」から「未来の大人たちへ」。そう、おじいさん、おばあさんが生まれ育った頃から、未来の大人となる子どもたちの世代まで、長い時間の物語が眠っているのが、この絵本なのです。

 魔法のトンネル第一は、
 おじいさんとおばあさんの話に耳を傾けましょう。♪うさぎ追いしかの山、こぶな釣りしかの川♪、このメロディーと共に、二人が子どもの頃のふるさとの様子が伝わってきます。おじいさんとおばあさんは同じふるさとで生まれ、共通の思い出をたくさん持っています。初めて見るテレビ、村祭りの様子やお正月のもちつきなど、二人の話から聞こえてくるのは、戦争が終わり、平和になった日本の歩みです。美しい絵に描かれた、ふるさとの風景は、五年毎に時間を移して、次々と新しくなる、ふるさとの様子を伝えてくれます。

 魔法のトンネル第二は、
 いろいろな遊び、遊びの変化です。

 めんこやゴム跳び、かごめかごめやかくれんぼ。まだ高価なおもちゃがない頃、子どもたちが楽しんだ遊びです。紙芝居の面白かったことなど、今のテレビや映画より、ずっとドキドキしたものです。遊びの変化をたどることにより、昔の匂いを楽しみ、なつかしい時間をよみがえらせてくれます。

 魔法のトンネル第三は、
 一九四六年から五年毎に変わる村の一コマ一コマを見比べてみること。たとえば、主人公のおじいさんの家、しょう油屋の山田屋やおばあさんの家の畑の様子を、ページをめくりながら、変化を楽しみ、確かめることができます。バスやトラックなどの変わっていく姿を追ってみてもいいですね。

『ふるさと60年』は、祖父母、父母、孫たち三世代をつなぐ絵本。魔法のトンネルを覗いて、家族の大切さを改めて実感できる本です。

(みちうら・もとこ)●既刊に歌集『無援の抒情』、エッセイ集『母ともっちゃん』、評論『乳房のうたの系譜』など。

「ふるさと60年 戦後の日本とわたしたちの歩み」
福音館書店
『ふるさと60年 戦後の日本とわたしたちの歩み』
道浦母都子・文
金斗鉉・絵
本体2,300円