日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『「渚くんをお兄ちゃんとは呼ばない」(既6巻)』 夜野せせり

(月刊「こどもの本」2019年12月号より)
夜野せせりさん

「好きなこと」を主人公に投影

「渚くんをお兄ちゃんとは呼ばない」、シリーズ1巻の「ひみつの片思い」は私のデビュー作になります。ありがたいことに、続刊を出して頂けることになり、現在、6巻の「つきあえなくても好き」まで出ています。これからも続きます。

 クラスでは目立たない、自分には何の取り柄もないと思っている、主人公の千歌ちゃん。そんな彼女が、クラスの人気者の男の子・渚くんと、親の再婚で義理の兄妹になり、ひとつ屋根の下で一緒に暮らすことになります。

 まさに少女漫画の王道パターン! なお話ですが、千歌ちゃんは、自分でも、その「少女漫画」を描いています。

 実は私は、デビュー前から、絵を描いたり漫画を描いたりする人物を書くのが好きで、よく小説の中に登場させていました。

 私自身が、子どもの頃、絵を描くのが好きで、友人とスケッチに行ったり、4コマ漫画を描いたりしていたので、「自分が好きなこと」を無意識に登場人物に投影しているのかもしれません。

 大人になってからは絵ではなく小説を書くようになったのですが、1巻で千歌ちゃんが漫画を初めて完成させるシーンには力が入りました。ジャンルは違えど、作者の私は、最初から最後まで描き切ることの難しさと、成し遂げた時の喜びを知っているので、千歌ちゃんにも乗り越えてほしくて、書きながらエールを送っていました。

 読者の子どもたちからも、「私もお話を書いています」というお手紙をもらうことがあります。物語を読む楽しさだけではなく、作る楽しさも知り始めているなんて、とても嬉しく、頼もしく思います。どうすれば面白い話が書けますか? とも聞かれますが……、それは、むしろ私が知りたい!

 渚くんシリーズは、私自身がわくわくしながら楽しんで書いています。巻を重ねるごとに、登場人物みんなへの愛着が増していきます。読者の子どもたちの心の中にも、千歌ちゃんたちが愛すべき友達として存在してくれたらいいな、と願っています。

(よるの・せせり)●最新刊は『渚くんをお兄ちゃんとは呼ばない~絶対ないしょの恋の作戦~』。

『「渚くんをお兄ちゃんとは呼ばない」(既6巻)』"
集英社
『「渚くんをお兄ちゃんとは呼ばない」(既6巻)』
夜野せせり・作/森乃なっぱ・絵
本体各640円